貴族様がやって来た。 皆に協力してもらい、ツリーハウスが完成した。 俺の城がまた一つ完成したわけだ。だが、こいつはここに固定なので、動かすこともアイテムBOXへ入れる事も不可能だ。 上に載っている小屋だけは、アイテムBOXへ収納できるが。「わ~い!」 アネモネが、テラスの上ではしゃぎ回っている。そして部屋の扉を開けると、ベッドだけで部屋はいっぱい。「ここには、ベッドしか置かないの?」「そう、寝るだけの部屋だ。たまにここで寝るのも、良いだろうって思ってな」 テラスにはテーブルと椅子も備え付けているので、ここで読書をしたりするのもいいだろう。 こういったツリーハウスは虫だらけになってしまうのだが、この世界には虫除けの魔石がある。 婆さんの所で買ってきた、魔石をセットすれば虫除けは完了だ。「そういえば、蛇って木も登るよな」「ふぎゃ?」「まぁ旦那がいれば大丈夫じゃね?」「確かに俺は蛇が平気だが……後で、柱に蛇返しでもつけるか」「そのほうがいいにゃ!」 ミャレーは本当に蛇が嫌いなようだな。 完成したツリーハウスで夕飯を食べるために、下で料理をしてアイテムBOXへ入れる。 アイテムBOX内では時間が止まるようなので、こんな事も可能だ。 今日は、リクエストでカレーにした。なんかいつもカレーを食っている気がするが……。 そして、今日はツリーハウスの完成祝いなので、ハンバーグカレーにしてみた。 この前、処分した子牛の肉がまだあるのだ。 子牛の肉をミンサーに入れ、ひき肉にしてから、繋ぎの卵と小麦粉、玉ねぎのみじん切り、そして塩と胡椒少々。それらを良く練る。「よ~し、アネモネはこれをグチャグチャに混ぜて、よく練ってくれ。プリムラは、カレーを焦げ付かせないようにな」 ベル用に玉ねぎ抜きバージョンも作ろう。「うん!」「はい」「焼く時に1つにするなら、細かくに切らなくてもいいのにゃ」「硬い肉でも美味しく食べられるし、普通の肉焼きより、こっちのほうが好きってやつもいるぐらい美味いんだぞ?」「相変わらず、旦那の料理は凝ってるねぇ」 練上がった種の真ん中を凹まして、鉄板の上で焼く。「いい匂いにゃ!」「たまらねぇ!」 獣人達が我慢しきれず、よだれをタラ~リと流している。 ハンバーグが焼きあがる頃、タイミング良くご飯も炊きあがった。米を食べているのは俺とアネモネだけだが。 料理が完成したので、ツリーハウスへ皆で登る。 上に登るにはハシゴしかないので、アイテムBOXが無ければ大変な事になりそうだが、その心配もない。 テラスに設置されているテーブルの上に、出来上がった料理を並べた。 ベルには、俺達と同じハンバーグに追加して猫缶を開けてやる。彼女のハンバーグは塩分を控えめにしてある。「ケンイチ――私も、その白いのを食べてみたいのですが」「ご飯か?」 この前、プリムラは赤飯を食べて美味かったらしいので、米に興味が湧いたらしい。「うにゃ! 肉が柔らかくて美味いにゃ!」「おほ! 確かに、硬くて噛みきれない肉も、こうすりゃ美味いだろうなぁ。しかし食事の度に、あんな手の込んだ事なんて出来ねぇ」「それなりに手間暇掛けないと、美味い料理は出来ないぞ。ベルが食っている、お前達が好きなあれも、手間暇掛けて加工してあるんだから」 あれというのは猫缶である。