「ふわぁぁぁぁ……って、そうではない!」「私もぉ!」 アネモネが俺に抱きついてきた。「アネモネ! ケンイチの正室は妾じゃぞ!」「べぇ~!」 アネモネとリリスが俺の周りをぐるぐると回り始めた。「ほらほら、喧嘩しない」 二人の頭をなでる。「「ふわぁぁぁぁ……」」 二人がおとなしくなったところで、ジャムを作ってみることにした。 シャングリ・ラで、追加のアメリカンチェリーを3kgほど買う。 皆でヘタとタネを取る。大量に作っても、アイテムBOXに入れておけば問題ない。 グラニュー糖と、酒のジンを入れてかき混ぜて、アネモネの魔法の出番。「アネモネ、温めて沸騰させてくれ」「うん! 温め(ウォーム)!」 すぐにクツクツと、チェリーに火が通る。「魔法って、電子レンジより高性能だからなぁ」 アキラが煮えるジャムを見てつぶやいた。「そうなんだよ。アネモネが魔法を使えるようになってから、あまり電化製品を使わなくなってしまった」 獣人たちもジャムを見ていたのだが、ニャメナは他のものに興味があるようだ。「あの……旦那。それって酒だよな。すごくいい匂いがするんだけど……」 ジンに入っている、ジュニパーベリーの香りを嗅ぎつけたようだ。 アイテムBOXから、カップを出してジンを注ぐ。「まだ日は高いから、少しだけだぞ」「へへへ……」「ケンイチ、俺にも……」 アキラもジンを飲みたいようだ。呑兵衛はこれだから困る。 ジンを飲み始めたニャメナとアキラだったが、匂いを嗅ぎつけた呑兵衛がもう一人――。「聖騎士様ぁ……とても、いい香りが……」「アマランサス、お前もか。少しだけだぞ」 彼女はウワバミって話だから、気をつけないと。 呑兵衛たちが酒を飲んでいる間に、チェリーが煮えた。 アネモネの魔法で冷やしてもらって、レモンを絞る――といっても、レモン汁がシャングリ・ラで売っているので、そいつを買った。1000円だ。