俺の予想していた通り、ゼファー団長が勝った。 チェリちゃん、かわいそうに。イイトコナシだ。 でもまあ仕方がない。半年間、ゼファー団長はこの自爆戦法を成功させるためだけに必死こいてHP・VIT・MGRをガン上げしていたのだろう。叡将戦出場を目指して満遍なく努力していたチェリちゃんとは、努力の精度が違う。「思えば、セカンド殿の戦法ばかりだな」「ん?」 唐突にシルビアが口にした。どういう意味だろうか。「ニル殿とケビン先生の採用していた戦法も、元はセカンド殿がアルファさんに教えたものだろう? そしてゼファー殿の自爆戦法。これもセカンド殿がチェスタ様を相手に使っていたではないか」「あー……そりゃ、なぁ」「む? 何か変なことを言ってしまっただろうか」「いや、そういうわけじゃないんだが」 ただ、その「戦法」という表現。俺は違和感を覚えずにはいられない。 何故かって、【魔術】だけで戦っていて、戦法もクソもないじゃないか。 そりゃヒット・アンド・アウェイや自爆くらいしかできねえよ。戦い方なんて被って当然。 そもそも、叡将戦は、そんな勝負ではないのだ。 第一回叡将戦で、0k4NNさんが、そう明らかにしている。「なるほど。戦法ではなく手筋、と、そういうことか?」「まあ、そんなところだ」「ふふん」 ぴたりと言い当てたと思い、得意げなシルビア。なんだか可愛いので、それでよしとする。「えーと、次がケビン先生とムラッティで、その勝った方がゼファー団長とか……」「なあなあ。センパイの予想、聞いてもええ?」 次の試合まで暇なので、対戦表を眺めて予想をしていると、横に座っていたラズが興味深そうに話しかけてきた。 俺は、大して考えることもなく、こう答える。 この中で唯一、叡将戦ができるだろう男の名を。「ムラッティ・トリコローリ」