恐らくミツラが調合した香水か化粧品でも渡されたのだろう。 女性にとってはある種のキラーアイテムなのかもしれないが、お前ら王室御用達の使用人としてのプライドはどうした。「ほら師匠♪ 早くこっちに座ってください♪」「……」 心底楽しそうにパタパタと隣の席を叩くミツラに、一度だけ小さく溜息を吐くと、大人しく観念することにする。 ここでごねても何ともならないだろう。むしろ変に意識したら負けな気もする。 ミツラ達から告白を受けて、今日で3日目。 その間、俺は5人から猛烈なアタックを受け続けており、それがここ最近の俺の悩みの種だ。 いや、別に彼女達の好意が嬉しくない訳ではない。 だが、仮にも俺は5年間想い続けた幼馴染にフラれたばかりなのだ。正直まだ次の恋を考えられる状態じゃないし、こんな状態で心の隙間を埋めるように誰かを選んでも後で絶対後悔する気がしたので、気持ちの整理を付けるまでもう少し待って欲しいと伝えたのだ。「はい師匠、あ~ん」「……」 伝えた……のに、コイツら滅茶苦茶グイグイ来るんだもんなぁーーーっ!! 朝から夜まで時間も場所もお構いなく、「気持ちの整理を付ける暇なんて与えねぇぜ!」と言わんばかりにあの手この手で迫って来る。 おかげで失恋したばかりだというのに碌ろくに落ち込む暇すらない。少しくらいセンチメンタルな気分に浸らせてくれってんだ。「ほぉ~ら、し・しょ・う♡」「……」 気にしたら負け気にしたら負け気にしたら負け………