「っつーか、話が飛びすぎなんだよ。で、ナポリたんの結論としては?」「祐介も気づいてんだろ。佳世と池谷は実は中学時代から知り合いだった、という可能性を」「……はい、さーせん」 ふざけてないと精神的にもたんだろ。俺のこの蜘蛛の糸みたいに繊細な神経を理解してくれ。まあ、なんで池谷がお隣県から引っ越してきたか、という謎は残ってるけど。「で、だ。そのことを佳世にメッセージで尋ねたら、あれほどひっきりなしに来ていた佳世からのメッセ&着信爆撃が止んだんだわ」「……わかりやす」「本当だな。そういうわけで、裏付けは必要かもしれないが佳世のほうはほぼ確定。今は池谷の事情に詳しいやつに当たっている最中」「ありがと、ナポリたん」「いんや、バスケ部のためでもあるからな。不祥事をこれ以上表ざたにしてもいいことないし。大事件になりそうなら、関係者全員を闇に葬るしかない」 そう言い切ったナポリたんに、白木さんが目をキラキラさせている。「小松川ジェームズさん、すごいです……闇に葬るなんて、仕事人の鑑かがみ……」「あ、ああ、別にボクは、バスケ部を廃部にしたくないだけだからな。悪いがおまえらのことはついでだ、ついで」 白木さんに褒められてまんざらでもなさそうなナポリたんではあるが。昨日、かわいい甥っ子のためって言ってたのは誰だよ。 白木さんの十分の一くらい素直さを持てば、ナポリたんも萌えるごみ卒業余裕なのに。「ツンデレまでいただきました……今年の主水モンドセレクション、金賞間違いなしですね」「それが言いたかっただけかい! いつまで仕事人ネタ引っ張るんだ!」 そして白木さんも通常営業でしたとさ。 さて、今日の放課後は土日の準備をしないとな。 とりあえずは、シベリアというお菓子がどこで売られているか調べるところから始めるか。 ………… 土日で、佳世が池谷のところにのこのこ顔を出しに現れたら──どうしよう。 ―・―・―・―・―・―・― それからどうしたかというと。 俺は放課後はさっさと学校を出た。 少しだけ白木さんを探したが、池谷らしき高身長で足も長くて寝ぐせみたいなヘアスタイルをワックスでセットしている制服を着崩したチャラい野郎がそばにいたので、近寄らず離れた。 白木さんが遠目にも困惑していたのがわかったので、メッセージで『今日は早く帰ってきなさい。母より』とだけ送っといたけどな。 とりあえず、シベリアを販売しているところを近場で探し出さなければならない。 羊羹とカステラから自作するのもハードルが高いし。 そんなわけで、帰宅そうそう自室にこもってインターネット三昧。 きょうはオヤジとおふくろが高校の同窓会のため、帰りが遅い。ゆえに晩飯は適当に済ませた。 インターネット中、さまざまなわき道にそれ、シベリアのこともいつしか頭から飛んでしまい、時間も忘れて没頭してると。 ガチャ。 なぜかノックも声もなく部屋の扉が開く。 妹の佑美かな、と思って、ドアのほうに視線を向けたら。「……祐介……」 きょう学校を休んだはずの佳世が、やつれた表情でそこに立っていた。 ガチャの結果はSRみたいけんどころかNビッチなり。いい加減SRウサミンえいえんのじゅうななさいよこせや、おい! ……じゃなくて。 土日の前に、池谷の家じゃなくてのこのこと俺の部屋に登場ですか。予想害もいいとこだぞ、おい! ──次回、修羅場。