青の長髪に、薄く筋肉の張ったしなやかな肉体。肩から腰に掛け、袈裟切りに痛々しい負傷が見受けられる。女は人間では無く、魔に属する者。静かな瞳で、眠る少年を見つめていた。「……本当に、居なくなられたのですね」そっと呟いた。「ハルビヤニ様……」笑っていた。静かに、穏やかに笑っていた。親鬼クスタンビアが、シャスラハールの寝顔を見つめて微笑んでいた。「とても、不思議な気分です」窓枠に尻を置き、空中に足を投げ出した体勢で女鬼は言う。「ワタシの一生は、常に貴方の為にあるものでした。貴方の為に武を極め、貴方の為に多くを殺して汚した。そして、貴方が戯れに望まれれば、どんなところでもこの体を差し出しました」髪を撫でながら、クスタンビアは続ける。「ワタシはずっと、貴方に憧れていました。貴方の毒々しいまでの輝きに目を奪われていました。貴方が成し遂げる功績にワタシが一端でも関われる事が、無上の喜びでした」さながら慈母のように、シャスラハールの内側へと声を掛ける。「ジュブダイルが仲間になり、ラグラジルが生まれ、アン・ミサ、ラクシェと続いた頃から、貴方はワタシをあまり見てはくれなくなりましたね。それでも、ワタシは貴方の事が好きでした。どれだけ悪しざまに利用されたとしても、貴方がワタシを見てくれる。その喜びに震えていました」