「今日は休んでおけと言っている!」「嫌だ! 休まない!」「なんだと! 私はセカンド殿のためを思って!」「余計なお世話だっての!」「なっ、わからん男だな!」 翌朝。 ラズベリーベルがリビングへ降りると、シルビアとセカンドが喧嘩をしていた。「なんや、朝から騒々しい」「ラズ! 聞いてくれ! こいつ俺に休めって言うんだ!」「ラズベリーベル! セカンド殿はここ数ヶ月一日も休んでいないのだぞ!? 一段落ついた今日くらい構わないではないかと私は言っているのだ!」「昨日だって午後は休んでたじゃねーか!」「ユカリに鍛冶の指示を出していたではないか!」「ほらァ! 休んでんだろ!?」「それは休んでいるとは言わーんっ!」 ぎゃーぎゃーと言い合う二人。 そんな様子を見ながら、ラズベリーベルは溜息まじりに口を開く。「……もう結婚したらどうやアンタら」「いや、どうしてそうなった」「け、けけけ、けっ、こけっ……!?」 呆れるセカンドと、変な声を出して硬直するシルビア。「しるびあ、やきとり!?」「エコ、焼いたらあかん」「とり!」「せやなぁ」 ラズベリーベルは「朝メシ前なのにご馳走さんやわ」と呟いて、洗面所へと移動した。 顔を洗いながら、ふと思う。 羨ましい――と。 セカンドと痴話喧嘩をする。 それがどんなに難しく、そして尊いことか、シルビアは知らない。 十年かけてできなかったことを、目の前でこうも簡単にやられてしまうと……ラズベリーベルとしては、ただただ「羨ましい」の一言であった。「……いや、ちゃうやろ」 落ち込みかけた自分に、自分で活を入れる。 この世界に来て、ラズベリーベルは大きく変わった。 陰から彼を見ているだけでは、もう駄目なのだ。 その横に立つべく行動を起こす。そう心に決め、告白をしたのではなかったのか? もう彼の迷惑にはならない。独りよがりの想いにはならない。心からそう信じ、その夢をささやかに実現するために『ラズベリーベル』をメイクしたのではなかったのか? 自問の答えは、すぐに出る。 YESだった。もう、これ以上ないってほどに。「よっしゃ!」 パン! と湿った頬を叩き、ラズベリーベルは気合を入れ直した。 顔をタオルでぬぐい、鏡に向かってシャキッとした顔をする。 頑張れ、ラズベリーベル。負けるな、ラズベリーベル。 鈴木いちごは、彼女にエールを送る。 願わくば、彼の隣を笑顔で歩けるように――。