「とりあえず、海斗ちゃんがとってきて!」 そう言って、如月先生が俺の肩に両手を置いてきた。「絶対嫌です!」 当然俺は拒否をする。 桃井に学校で話しかけようものなら、後で何を言われるか分かった物じゃない。 それは桃井と他の生徒、両方からな……。「海斗ちゃん、どうせ桃井さんの誕生日が近いのに、まだ誕生日プレゼント決めてないんでしょ?」 少しの間二人で睨み合っていると、急に如月先生がそんな事を言ってきた。「うぐっ……仕方ないじゃないですか。女の子にプレゼントって何を買ったらいいのかわからないんですから……」 俺はそう正直に答えた。 わかってる、わかってるんだ。 もうすぐ桃井の誕生日。 挙句に姉弟三人で遊びに行くんだ。 それなのにプレゼントの事を忘れるほど、俺は馬鹿ではない。 だがしかし――桃井が喜びそうな物がわからないのだ。 過去に一度、女の子にプレゼントを贈った事はある。 それは――春花の誕生日にだ。 俺は春花の誕生日に、髪留めをあげた。 ただそれは、俺が春花と遊んでる時に春花が欲しそうに見ていたから、プレゼント出来たのだ。 今の桃井が何を欲しがるかなんて、俺にはわからない。 いや、ラノベとか贈れば喜びそうだが……女の子の誕生日プレゼントにそれはどうなんだと思う。 だから、俺は困っていた。「そんな海斗ちゃんにお勧めの良いお店を紹介してあげましょう! ただ、やっぱりプレゼントは海斗ちゃんが選んだのが良いと思うから、そこからは頑張りなさい。でも、教える代わりに――」「桃井からプログラムをとってこいって言うんでしょ……?」「その通り!」 俺が如月先生の言葉を遮り尋ねると、如月先生は凄く良い笑顔で頷いた。 まぁ確かに……この先生のお勧めなら信用できる。 意外とこのポンコツ教師はファンションセンスが凄く良いのだ。 ――うん、職業選択をミスったなと思うくらいにな……。 だから、きっと桃井が喜びそうなのが見つかると思う。 ………………仕方ないな……。 これも桃井を喜ばせるためだ……。「わかりました、行ってきますよ……」「やったぁ! じゃあ、いってらっしゃ~い」 俺はポンコツ教師の呑気のんきな声に見送られ、桃井の教室に向かうのだった――。 なんで俺が……。 ――と、もちろんあまりの理不尽展開に、納得がいかない俺でもあった――。