準備「どういう事だポーア! 私があんな小娘のパートナーなんて聞いてないわよ!」「いいじゃないですかリーリアさん。生粋の戦士であるリーリアさんの戦闘方法を、フェリスに教えるいい機会なんですよ。大丈夫。足手まといにはなりません」「いや~、でも僕がブライト君とパートナー組むのは無理があるんじゃないかなー?」「いい援護をしてくれると思いますよ? まずは一週間、様子をみてください」 強制的に聖戦士の力を体感させれば、二人は自分の立ち位置、役割を理解するだろう。 それには俺じゃダメなんだ。 見慣れた俺の動きや考え方に合わせるのではダメなんだ。 チャッピー、ブライト、フェリスは沢山の戦闘を経てチームワークを構築した。 だが、それだけじゃこの前線では足りないんだ。 一言われたら三から四の行動をしてもらわなくては死に繋がる。 先の事も考えなくちゃいけない。 見据える先にある未来で、二人の戦力は必ず必要となるのだから。「……ふん、ポーアの頼みだから聞いてあげるわ。だが一週間だけだからね! その先の事に関しては、私も責任を負いかねるわ!」「ん~、とりあえず様子見って事で受け持つけど……死んでも知らないからね?」 死なれると困る。 しかし、振り返った先にいる二人の堂々とした立ち姿を見ると、俺の頭には何やら確信めいたものが見えて仕方がなかった。 ―― 一日目 ――「…………付いて来るな小娘」「うるさいわね、私の勝手でしょ!?」「やっぱりポーアさんの見込み違いじゃないかな~。あそこであんな魔法を打ってるようじゃ~、ねぇ?」「……次です。次挽回してみせます」 ―― 二日目 ――「全然ダメよ。一撃で頭を吹き飛ばすか心臓を潰せるようにならないとね」「何よ、アンタだって三匹打ち損じたじゃない。そういうのをね、五十歩百歩っていうのよ」「確かに昨日の問題点は修正してきているようだけど、応用が追いついてない感じが否めないよね~」「……なるほど、全てのモンスターに対して初手から応用が必要だと」 ―― 三日目 ――「ふざけてるの? 私のフォローなんて百年早いわ。今は自分の出来る事に集中すればいいのよ」「ふん、出来ると踏んだからフォローをしたの。アンタこそふざけるのはその食欲だけにしといてちょうだい」「ん~、まだね。まだ足りないんだけど、頑張ってる方なんじゃなーい? ポーアさんならもっと早く動くから合わせやすいんだけどね~。いや、まだそれは早いのかもね」「つまり、応用は追い付いたけど体術が追い付いていない、と……」 ―― 四日目 ――「武器の特性を考えなさい。金棒に刃はないけれど、両端を上手く使いこなせば視野も戦闘の幅も広がるはずよ」「そ、そんな事……知ってたわよっ」「倒す事より生きる事を考えた方が結果的に早く倒せたりするんだ。死中に活を求めるのは逃げではないよ」「抽象的な表現ですね。しかし、仰る事は理解しているつもりです」 ―― 五日目 ――「まだよ、まだ足りないわ。モンスターの波の中で息継ぎ出来るポイントを探しなさい。戦闘持続は技術でどうにでもなるわ」「ふん、やってやろうじゃないのっ」「SSランクのモンスターを片手であしらえるのは当たり前。モンスターの死体をどこに倒すかで死角を増やしたり減らしたり出来るんだ。最適手で倒す事を覚えただけではこの地獄を生きていく事は出来ないよ~?」「そういう事か。なるほど、確かに消し炭にするより燃やし続けた方が壁に出来る。……わかりました、ありがとうございますっ」