そう言って、形の良い鼻をこすりつけてくる。お風呂上りとはいえ秋らしい冷える夜だ。ほんの少し冷たくて、ぺちぺち鼻同士が触れ合うとくすぐったい。 にへらと互いにだらしない笑みを浮かべ、それからマリーは周囲の布団を手にすると僕に腰かけてくる。あったかい布団と少女から伝わってくる体温があれば、秋の夜でも困らない。 見上げてくる彼女と一緒に、当時のことをぽつぽつと語り合い始めた。「あのときのあなたの恰好、何だったの?」「うーん、伝えづらいな。どうしようも無いときも、男というのは前進をしなければならない生き物なんだよ」 そう、あの日は嵐が過ぎ去ったばかりで、空が晴れ渡っていたのを今でも覚えている。