オッ!という音響と映像に呑まれ、気がつけば決して越えられない壁だろうと思っていたものが破壊されていた。 絶対に勝てないと冒頭に教えられていたというのに、それを打ち破るほど成長をした主人公らの姿。取り戻した本当の世界というものに、なぜか分からないけれど胸がとても熱くなる。 この勝利は本当に簡単では無かったのだ。 失われた命は数えきれず、難度の高すぎるミッションをこなし、幾つもの奇跡により生まれた勝利だ。 それを知っているマリアーベルは、輝くような笑みで「やった!」と僕を振り返る。もう手は汗だらけで、前髪もしっとりと濡れている。だけどそんな事など気にもせず、純粋に少女は勝利を喜んでくれた。 楽しむ表情というのは、何事にも変えられないほど嬉しく思える。そんな顔を見たくて、彼ら映画監督は名作を生み出すのだろう。 少女の表情から、僕はそんな事を思った。「どうだった、マリー。映画館は楽しめたかな」「すごいわ、大きなスクリーンはもちろんだけど、音や音楽が周り全体から聞こえてきて何度も鳥肌になってしまったもの。見てちょうだい、まだ残っているわ」 そう言って見せられた腕を、僕はゆっくりと撫でる。ぷつぷつした感触に、身をよじらせて少女は笑う。 大きなスクリーンには製作者たちの名を連ねており、物語の余韻はまだ残されている。皆が皆、同じ世界観を共有していたというのも面白いだろう。 だからこうして感想を話しあうと、まるで互いに共感しあえたようにも感じられる。 それによると、マリーは宇宙というのを初めて感じたそうだ。 本やテレビを見て理解していたつもりだけど、体感できたのはこれが初めてだったらしい。 そういう意味でもこの映画館に来たおかげで、忘れられない思い出になったかもしれない。 あ、そういえばウリドラはどうなったんだろう。 館内に照明を灯されてから、僕らはようやく彼女のことを思い出した。