「あああああっははははははははははははははは!お願いやめて!みなさん、やめて下さいいいいいいっひひひひひゃああああああっははははは!やだやだやだあああああっはははははははははははははははははははははははははははははは!」「ダメだよ、お姉ちゃん!いっぱいくすぐらないと死んじゃうんでしょ!?」 必死にやめるように訴えかけるが、ハトの言葉を信じてしまった子どもたちからは、逆にたしなめられてしまう。「ち、違っ!?そんなことありませんからああああああっあっああああっあああああっははははは!いひゃぁあああっははははははははっはあははははははははっはははははははははははははは!」 単純なくすぐったさもさることながら、小さな手がたくさん迫ってくる光景は、視覚的にもくすぐったい感覚を倍増させてしまう。『ただ適当にくすぐっちゃダメだよ!悪魔が隠れている所があるんだ!そこを今から教えるね!』 今の状況でも大変なのに、ハトは非情にも彼女の弱点を教えていく。『まずは腋の下だ!特にくぼみの中心を狙ってカリカリするんだ!』「あはははっははっはははははははははははは!あははははははははははははは!やめてええええ!やめてやめて、腋の下だめ!だめですうううっひゃひあああああっあああああっはははははははははは!」 制服姿のときには見られなかった、すべすべの腋の下を直接こちょこちょされて笑い悶え、『よーし、次はその少し下、肋骨まわりを指でコリコリして!』「イヤあああ!いやぁあああああああああああああああはははははははははは!くすぐっくふひゃはははっははははははっははははは!そこもくすぐったあああああああああああああああははははははははは!」 肋骨そのものをまさぐられるかのような感覚に声を大きくし、『今度は太腿だよ!内腿のあたりをモミモミするんだ!』「ぷひゃあああああっ!ひっひぃぃああああああああああ!ふふふっふふっふふふふふふふふっふふ!そんなところ、モミモミしなふひいっひっひひひっひぁあああっははっははははははははははは!」 俗に言う絶対領域の部分をグニグニと揉みしだかれて奇妙な叫び声を上げ、『後は足の裏だ!そこは特に悪魔がたくさんいるから、爪を立ててガリガリしようね!』「いやあああああっ!足の裏もだめ!だめですよおおおおおっほほほほほゃあああああああっははははは!あああああっんんっ!んんんんんっふふふふふっいいいいいっひひひひひゃああああああっあああああっ!」 白のニーソックスに包まれた足裏もガリガリと擦られ、思わず足をジタバタさせようとするが、ここでうかつに動かして子どもたちを蹴り飛ばしてはと、すんでのところで思いとどまる。 ただ、残念ながら彼らにはそんな彼女の思いやりは伝わらない。むしろ動かないぶん、まともにくすぐられてしまうことになる。「ひゃあああああっはぁあああっはっははははははっはははははははははははははははははははははは!も、無理です!お願いですからもうやめて下さいいいいいいっひひひひひひゃああああああっははははははははははははははは!」 腋の下、肋骨まわり、太腿、足裏をくすぐられていると、さらに彼女の皮膚に別の感覚が襲いかかる。「はにゃああああああっ!?な、なんですか、これはあああああっ!?こちょこちょにサワサワが!?わ、訳が分かりませんよおおおおおおっほほほほほゃあああああああっはははははははははは!」 突然、筆のようなもので撫でられる感覚が追加されたのだ。(ふふふふふ♪コレを使えば、こんなコトもできちゃうんだよね~♪) 先ほどまで神來のぬいぐるみをくすぐっていたマジックハンドには毛先の柔らかい絵筆が握られており、それらはホコリを払い落とすような動きで、こちょこちょと弄る。(指と筆の同時くすぐりなんて貴重な経験だよ、神來ちゃん。存分に味わってね~♪)「あああああっあああああっはははははははははははははははっ!も、もうくすぐったいいいいいいっ!くすぐった過ぎますうううっひひひひひゃああああああっ!やだやだやだあああああっははははは!いやああああああっははははは!」 子どもたちの指と遠隔操作の筆のくすぐり二重奏に、神來の口からは苦しげながらも可愛らしいメロディが紡がれ続けている。 そんな中、一人だけ輪の中から離れ、おどおどしている男の子がいるのを、ハトは見つけた。『むっ、そこのキミ!どうしてキミはお姉ちゃんをくすぐらないんだ!?』「えっ……だって……お姉ちゃん、とてもくるしそうだよ。なんかわるいよ、こんなの……」 ハトに厳しい口調で言われた男の子は、ビクッと身体を震わせてしまう。『……そっか、キミは優しい子なんだね。分かった。ちょっと待っててくれるかな?』 躊躇している彼を見たハトは、打って変わって優しい声色で語りかけ、『よーし、みんな!一度くすぐりを止めて!少しお姉ちゃんを休ませてあげよう!』 そして、他の子どもたちにくすぐりを中断するよう呼びかけた。「かはあっ!はあーっ!はあーっ!はあーっ!はあーっ!」 くすぐったさが治まり、ようやく一息つくことができると、神來が呼吸を整えていたそのときだった。(聞こえるかな~、神來ちゃん?聞こえたら、頭の中で返事してくれる?) 突然、脳内に声が響き、神來はびっくりしてしまう。(えっ!?あ……あなたは……ランたん、さん!?)(そうだよ。今、キミだけに直接話しかけてるんだ。子どもたちのくすぐりは、どうだったかな~?)(っ!……これも、あなたの仕業だったんですね!この子たちも巻き込んで、こんなことをするなんて、ひどいです!) 神來は、精一杯の怒りを込めてハトを睨みつける。(あはは。怒った神來ちゃんも可愛いねえ。ただ、私としてはもう一押し欲しいんだよなあ)(ま、まだ……!?)(そこの男の子がくすぐってないでしょ?だからさ、神來ちゃん……キミの口から“私をくすぐって”って、頼んでくれないかな?) ランたんが口にしたのは、彼女の想像を超えたミッションだった。(えっ、えええっ!?そ、そんなのイヤです!) そんなこと言えるはずがない!と、神來は首を横に振る。(あ、そう?じゃあ、そこにいるみんなが大変なことになっちゃうけど、良いの?)(っ!?……た、大変なことって、どういうことですか!?)(それはナイショ。ただ、私は神來ちゃんが可愛くて強くて心優しい素敵なヒロインだと信じてるからね。その想いは裏切らないで欲しいなあ~♪)(ひ、ひどい……この子たちにも危害を加えようとするなんて……それでもあなたは、この保育園のスポンサーなんですか!?)(えーっ?スポンサー“だから”どうしようと勝手でしょ?あーあ、神來ちゃんにヒドいこと言われて傷ついちゃったな……そんな態度を取るなら、今すぐここを滅茶苦茶にしちゃおーっと)(まっ、待って下さい!わっ、分かりました!分かりましたから、変なことはしないで下さい!)(ホント?良かった~。やっぱり神來ちゃんは優しい子だ。あ、そうそう。その男の子には脇腹をくすぐってもらってよ。それも神來ちゃんが一番くすぐった~く感じるやり方でねえ~♪) ふてくされた言動から一転してコロッと態度を変え、さらに厳しい条件を付け加えていくランたん。そして、その言葉を最後に、脳内に声は聞こえなくなった。