第3話 お師匠様との出会い 俺は旅に出た。1度も出た事がない俺の故郷を出ることにした。 それから俺は色んな街や村を見た。俺が見た事が無いもの、感じた事が無い事等、たくさんの出来事があった。だが、本気で楽しめた事なんかない。いつも思い出してしまう。あの出来事を。どうしても離れてくれないんだ。 勿論強くなるための修行も忘れてはいない。俺は冒険者登録をし、金を稼ぎながら強くなろうとした。だがそれだけでは足りない。何かが足りない。そう思いながらさらに2年間旅を続けた。 ある日、俺は1人の男と出会った。歳は40代後半と言ったところだ。髭を生やし、白髪混じりの黒髪が特徴的な男と。 俺は今、その男と飯を食っている。どうやって出会ったかは忘れた。なんで飯を食ってるのかも忘れた。でもそんなことはどうだって良かった。ただその男は凄く強い事だけは覚えている。見惚れてしまいそうな程にその戦い方は美しかった。「お前はなんでそんなに強くなりたいんだ?」「·····必ず倒したい奴がいる。復讐してやりたいヤツがいる。見返してやりたい。·····そんなガキみたいな理由だよ」「復讐か·····。どうしてそこまでこだわる? それにはそれ相応の理由があるのだろう」 男は分かったような口を聞く。俺がこの手の話をすると大体こういう反応をされる。俺はそれがたまらなく嫌だ。だが何故かこの男にはそんな感情は抱かなかった。 なぜだかこの人は今まで出会った人とは何か違うものを感じてしまった。何処か惹かれるものがある。 男は「だがな·····」と言い、話を続ける。「復讐はいつか身を滅ぼすぞ。まあ分かってるかもしれんがな。それにお前はまだ若くて弱い。分かっているな?」「·····まあな。だから強くなりたいんだ。あんたみたいになりたい」「そうか·····ならば戦い方を教えてやろう。ついてくるか坊主? 決めるのはいつだってお前だ。誰でもねえお前自身だ」「俺の目的の近道というのなら·····俺はあんたについて行く」「そうか。だが今日はゆっくり休め。ちなみに俺の名前はベイトだ。ベイトさんでいいぞ」「·····俺はライトだ」「そうか、よろしくなライトの坊主」 何処かベイトさんの言葉には重みがあった。隠しきれない強さがそこにはあった。 俺はあの日以来、初めて心を許せる人が出来た。そんな気がした。俺の先生と呼べる人だ。 次の日からベイトさんとの旅が始まった。ベイトさんも冒険者をやっていて一緒に依頼をこなしたりしながら稽古を付けてもらっていた。移動の合間や休日等はいつもだ。 だがハッキリいってベイトさんの稽古は死ぬ程キツかった。最初はそこまでだったのだが、日が経つにつれてどんどんきつくなって行った。1人でゴブリンの巣に放り込まれたり、オーガの囮にされたり、とにかく無茶苦茶だった。だが確実に俺は強くなっている自信がある。 中でも盗賊団のアジトに放り込まれた時は焦った。流石に死ぬかと思った。「ぎひひっくう、なんか変な虫がいるな」「