「ケンイチ様、姫様がおよびで御座います」「旦那ぁ、やったな。夜のお誘いだぞ?」 ニャメナがとんでもない事を言うので、プリムラの顔が怒りで赤くなる。「未婚の王族だぞ? ありえないだろ」 だが要件はどうであれ、呼び出されたという事は、参らなくてはいけないだろう。 メイドさんに案内されて、お城の中へ入った。 手に持った明かりで、暗くなった廊下を照らし階段を上る。そして案内された部屋。 大きな茶色の立派な扉が待ち構えていた。 扉を開けると、天蓋付きの大きなベッドと、その脇に立つ王女とメイド長さん。だが、ここは王女の私室というよりは、来賓者のベッドルームのような……。「リリス様、およびでございましょうか?」「うむ! 色々と其方には世話になったからの、褒美を取らせようと思うての」「褒美でございますか?」 う~ん、それなりに褒美は貰ったつもりだったが。書庫の貴重な本もコピーしてしまったしな。「其方、このマイレンのような女子が好みなのであろう?」 アップした黒い髪と、メガネ――そして豊かな胸と白と紺のメイド服。これが嫌いな男がいるだろうか? いやいるはずがない(反語)。「はい? 正直好みですが、よくお解りで?」「其方、妾の事なぞ目もくれず、ずっとマイレンの事を目で追っておったろう?」 え~? そこまで凝視してたかな。だって王女はまだ子供だしな……アネモネと2歳ぐらいしか違わないし。「これは、お恥ずかしい限りでございます。それで私にどうしろと?」「うむ、これが褒美じゃ。このマイレンを其方の好きにするがよい」 王女がとんでもない事を言い出した。