「でも兄貴もスゲーっすよ。だって四天王っすよ? ひょっとしたらセカンド様にも負けてないんじゃなッ――」 次の瞬間、兄貴の鉄拳がオレの腹にぶち当たる。「っぐ……かはっ!」 息ができねぇ!「おいプルム。お前はバカだからよ、ついそういうことを口走るってのは俺も分かってんだけどな。許せるもんと許せねェもんがあるってのはお前も分かっとけ」「う……ぅ」「どんな冗談でも、どんな理由があっても、常に主人に敬意を払え。自分の兄貴分の方が上だと思っても構わねェ。そりゃ大きな間違いだが、人ってのは間違いをする生きもンだ、今はまだしょうがねェよ。でも、決して口には出すな。クソほどイラつくんだよ」「……うっ……す」「まぁ、まだ会ったこともねェ人を敬うってのはなかなか難しいだろうがな。ただ……俺が、お前が、この家にいる全員が、大きな恩のある人だってのは胆に銘じておけ」 ああ、兄貴の言う通りだ。オレ、バカだったわ。何も考えてなかった。好きな人を侮られるなんてイラつくに決まってる。オレだって他の奴に兄貴をそんな風に見られたら絶対にイラつく。手が出るかもしんねぇ。 いや、でも……それでも、オレは兄貴が好きだ。こうしてオレのために叱ってくれる兄貴が一番好きだ。「すんませんっした、兄貴……!」「あ? 何だお前泣いてんのかァ? だっはは! バカじゃねーの! 情けねェなぁ!」 スゲー意地悪で柄が悪くてすぐ手が出る人だけど、初めてできたオレの兄貴なんだ。一生付いていきたいって思った男なんだ。 オレってとんでもねぇバカだけど、それでも兄貴に付いていきたい。だから、今はまだ「兄貴が尊敬しているからオレも尊敬する」ってくらいにしか思えねぇが、それでもご主人を尊敬することにした。兄貴が言うことは絶対だ。 ただ、やっぱり大きすぎて想像ができねぇ。スゲェ人なんだろうけど、いまいち実感がわかない。なんつーか「この世界は神様がお創りになられたんだから神様に祈りを捧げなさい」みたいな? 見たことも会ったこともねー神なんて信じられないのと似てるような気がする。 しっかし、どうして兄貴はそこまで尊敬しているんだろう? もしかして、四天王もか? ふと、オレはご主人に興味が湧いた。並み居る猛者たちからそれ程に尊敬を集める男。一体どんなスゲェ男なんだ、と。神と違って会えるんだから、その偉業を知ることもできるはずだ。だが、お目にかかれる機会なんてそうそうねぇ。うーん、どうしたもんか。「おし、じゃあ俺のインタビューは終わりだな。明日はリリィちゃんとこでも行ってきたらどうだ? 話は通しといてやるよ」「……! うっす、お願いしやす!」 そうだ、四天王から話を聞きゃあいいんだ!「流石、兄貴っす!」「あ? おう、そうだな」