アストランティアへ帰ってきた 子爵領から請け負った用水路の工事を完成させて、アストランティアへ戻ってきた。 そのまま子爵様の屋敷へ行くと、至高の障壁ハイプロテクションの魔導書をもらう事に。「しばし、待たれよ」 夫人に言われるまま応接室へ案内されて、待つことに。 さすがに貴族の屋敷だ。立派な造り――白い石造りの壁だが、下側には黒いマホガニーのような板が貼ってある。 並んでいる家具も一流品だ。素人の俺が見ても凄いと思うのだから、間違いない。 実際に、倉庫にあった家具をシャングリ・ラの買取査定に突っ込んだら凄い金額が出たので、これらも高額査定間違いないだろう。「待たせたな」 白いドレスに着替えてきた夫人が差し出した魔導書。黒い革製の表皮に金の細工が施され、中心に大きな石が嵌った立派な物。 見た目でも、価値がありそうな感じではある。それにしても、やっと手に入れたぜ。「我らは友人なのであろう? その……其方の所へ遊びに行っても良いかの?」「まぁな――だが、断る!」「何故じゃ!」「ケンイチ、カナン様が可哀想ですし……」「君が敵に塩を送る人間だと思わなかった」「塩ですか? よく解りませんが、友達がいないのは寂しい事ですし」 ああ、これは日本のことわざだったな……まぁ、意味はなんとなく通じるだろう。 プリムラも、子供の頃から親父さんの商売に付き合わされて、あちこちへ飛び回っていたので、同年代の友人がいないらしい。 子供らしい遊びもしたことがないという話も聞いた事がある。同年代の男に興味を示さないのも、その辺の事情があるのかも。「まぁ、プリムラがいいと言ってるから、良しとしましょう」「本当か!」 夫人の顔にパッと華が咲く。「反対! 反対~!」「アネモネが反対しているから、やっぱりダメだな」「私は子供以下なのか?」「だって、アネモネはとっても役に立つ良い子だしな~」 至高の障壁ハイプロテクションの魔導書を持っているアネモネの頭を撫でる。 まぁ、子爵領の財務を見るために、プリムラがここを訪れるんだ、話し相手ぐらいはするだろうし、それで我慢してもらおう。