魔弓術があって、魔剣術があるのだ。「魔魔術」があってもおかしくない。 魔魔術ならば、結局は【魔術】しか使っていないため、叡将戦でも使用できるはず……と、0k4NNさんがとち狂ってそんなことを言い出し、実際に叡将戦本番で使ってみちゃったのが始まりだった。 結果、何の問題もなく使えてしまった。 皆、驚き、そして、笑った。良い時代だった。 オカンさんの使う、ママ術。ゆえに――“オカン流”。「火・参と風・参の複合。これを相殺するなら、同様の組み合わせでなければならない。有利属性はない。火と風に同時に打ち勝つ属性は存在しないからな。ゆえに、運任せで対応した場合、成功確率は六分の一まで減る」 言いながら、俺は《火属性・参ノ型》に《風属性・参ノ型》を《複合》させた。 百聞は一見に如かず、これが魔魔術である。「あ、あー! はぁー! あはああああっ!!」「うわっ。なんだどうした」「……す、すみません。これ。興奮しすぎましたこれ。初めて聞いたスキルだったのでこれ」 ムラッティは両手をあげて大声を出してから、ハァハァと息を荒げてそんなことを言う。 本番はこれからなんだが、この調子で大丈夫か……?「複合、相乗、溜撃。魔魔術には三種ある」 他の、例えば魔弓術も同様だ。それぞれ、《複合》は【弓術】で一つの【魔術】を放つスキル。《相乗》は【弓術】に二つの【魔術】を付与して放つスキル。《溜撃》は【弓術】と【魔術】の火力を合わせたチャージ式倍率攻撃スキル。 この《相乗》が、オカン流の中でかなり重要なスキルとなる。 俺は一度、《火属性・参ノ型》と《風属性・参ノ型》の《複合》を破棄して、再び一から《火属性・参ノ型》を詠唱し始めた。「複合は、魔術で魔術を放つ。ゆえに二つしか合わせられなかった。だが、魔術に二つの魔術を乗っける“相乗”なら……こうなる」「!!!?」 《火属性・参ノ型》への《風属性・参ノ型》と《土属性・参ノ型》による《相乗》魔魔術。即ち……「三つのスキルを合わせられるんだ。こいつのミソは、何に何を乗せるかで、対応が変わってくるということ」