ひゃああ、という悲鳴が聞こえてきそうな顔だった。 そんなこんなでお出かけの服装が決まったシャーリーはというと、黒タイツによって太ももの形を露わにさせており、また薄地の白いコートで腰までを覆っている。そこから先は巻きスカートがかろうじて覆い隠している状態であり、これは階段を上るときは注意が必要そうだぞと他人ごとのように思う。 なるほど、やりすぎかもしれないというのはこういう意味だったのか。もっと深く考えておくべきだったかもしれないと、必死にスカートをずり下げようとするシャーリーを眺めながら思う。 まったく同じことを悩んでいたのか、おとがいに指を置いてしばらく眺めていたマリーは「うん」と納得してから唇を開いた。「この世界ではね、それくらいの服装が普通なのよ。そのタイツというものはズボンと同じ認識をされているから素足とはぜんぜん違うの。最初は少し恥ずかしいかもしれないけれど、きっとすぐに慣れるわ」 絶対? 本当に本当? そう言いたそうに涙を浮かばせた青空色の瞳を向けられて、しばし時間を置いてからマリーはこっくりとうなずく。 付き合いの長い僕だから分かるけれど、たぶん嘘だと思う。というのも少し前に買った黒タイツを試しに履いてみたところ、彼女は「あー、無理無理、絶対にこんなの無理だわ。恥ずかしい」と顔を真っ赤にさせていたのだ。 彼女の洋服好きは出会ったころからなにも変わらず、そして魔導竜という「わしに作れぬものはない」と言い張る強力な存在がいるため、我が家のクローゼットは常にパンパンだ。 しかし当のシャーリーはというと、ぐしゅっと鼻を鳴らしながら「本当かなぁ」と疑うように己の身体を前後から見下ろしていた。 きっと僕にも意見を求めてくるぞと察知して、すかさず「靴ひもを結ばなきゃ」とつぶやきながらしゃがみこんで事なきを得る。 あ、いや、無理だった。 かすかな迫力を感じて見あげると、そこには珍しく眉をちょっぴり逆立たせて不満そうな顔をするシャーリーがいたんだ。 蜂蜜色の髪を左右にまとめており、エルフさんと同じ服を着こなせるくらい身長も近しい。 しかし僕が凍りついたのはその表情だけでなく、現代の服装に慣れておらず警戒心の乏しい彼女が下着をかすかに覗かせていたことだった。