カインのよみは的確だったらしい、案外嘘を付けない少年はすこし困った顔で兄貴分を見上げる。
その困った表情で、少し首をかしげた仕草は垢抜けた美少女のようだったが、故郷にいる妹達で耐性が付いているカインはそんな魅了攻撃には引っかからない。
「そんな顔で見てもダメだ、お前スラムにいってるんだろ。あそこはモンスターが出るから俺たち訓練兵は立ち入り禁止のハズだぞ」
「・・・知ってるよ」
居心地悪そうにクラウドは目をそむけた。それ以上話すことはないといった雰囲気にカインは何度目かのため息をつく。
クラウドは早急に実戦のカンを取り戻す必要がある。
今の体格にみあった剣術を磨き直すには、1人のトレーニングでは限界だったのだ。危険なスラム街に赴いて得たのはなにも実戦経験だけではない。
おどろくべきことに、クラウドはマテリア無しで魔法を使うことが可能であることがわかったのだ。
まだマテリアを買えてない状態でヘッジホッグパイと遭遇し、つい癖でブリザドを打ち込もうとして・・・マテリアを装備していないにもかかわらずそのまま打ち込めてしまったことが発端だった。
まともな装備も買えない今、マテリア無しで魔法が使えることはとても有意義な発見だったが、それがどれだけ異端であることかもクラウドは理解していた。
この世界の中で、マテリア無しで魔法を使うことができるということが確認されている人間は、今のところセフィロスただ一人。
(どういうことだ、やっぱりあいつも未来の記憶があるのか)
イマイチ確信をつかめず、クラウドは焦りだけを抱えていた。