〆て約62万円の材料費プラス人件費無料。 高所作業車を買えば400万円はするのだから、かなり安い。 崖の岩を削って階段等を作ったら、いつ出来上がるのか解ったものではない。 だが、この単管を使った足場なら数日で組み上がる。 本当は崖の上まで足場を組むことが出来ればいいのだが、これ以上デカくすると、アイテムBOXへ入らなくなる。 こんなオーバーテクノロジーを放置して逃げないとダメ――そんな事態になったら困るからな。 そんなに色々と心配なら何もしない選択もあるのだが――いくらスローライフとはいえ、そんなのはつまらないじゃないか。 崖に埋まっているオレンジ色の石もそうだが、上の森にもお宝があるかもしれないのに。 電動ドライバーをもう1台買って、ミャレーに単管クランプを締めさせてみたが、上手いこと道具を使う。 こういう単純作業は得意なようだ。そして高い所にも平気で登っていく。 安全帯を付けろと言っても、要らないと言う――高さに対する恐怖心が全くないようだ。「私もやる!」 俺とミャレーの作業を見ていたアネモネも手伝うと言う。まぁ、電動ドライバーを使って、ボルト締めぐらいは出来るか。 勿論もちろん、アネモネには安全帯を付けて、使い方もしっかりと教える。 子供だと過保護にしないで、出来る事はやらせる。俺自身も、もっと彼女を信頼してやらねばならない。 彼女達に手伝ってもらった結果、3日で足場は完成した。 安全の為に崖にもアンカーを打ち込んでロープを使って固定しているが、こんな物を作るのは初めてで、これで安全なのかも不明なのだが……。「おお! やった! 完成した! いやぁ、為せば成るもんだな」「にゃー!」 ミャレーは足場へ駆けていくと、まるでジャングルジムへ登るように、次々と鉄パイプを伝って上に登っていく。「うみゃー! 高いにゃ!」「私も登る!」 アネモネは単管で作られた階段を登って上にいくと、ミャレーと一緒に気勢を上げている。 気がつけば、いつの間にかベルもやって来て足場を隅々まで調べていた。 俺も階段を登り、そこから見える景色を眺めて楽しんでいたのだが――。「ヤバ! もう、こんな時間か。ミャレー! プリムラを迎えに行ってくる」 完成したのが嬉しくて、プリムラを迎えに行く時間を少々過ぎていた。 この世界には個人用の時計はないが、街の鐘の音で大体の時間が把握出来る。聞くところによると日時計と水時計で時間を計って鐘を鳴らしているらしい。 日時計で正午を決めて、それに合わせて水時計を設定する仕組みだと言う。 俺も、この世界の正午に合わせて時計をセットしている。