草葉や微生物。それらの生命力を召喚し、四大元素で包んだ……謂わば棒人間。人形のような存在です。これを、こうして――」 俺は杖を振り高位次元体を吹き飛ばす。「――倒す事により、俺に経験値が入ります」「何よ……出来てるじゃないっ!」 嬉しそうな顔をするアイリーンだったが、俺は先程と同じく首を横に振ってそれを否定した。「発動に必要な魔力はおよそ十万。そして、コイツから得られる経験値は……たったの一です」 瞬間、アイリーンは目に諦めを宿し、顔を俯かせた。「実現だけって……そういう事ね」「俺が発動出来るのは一回の魔力で三十体まで。ギヴィンマジックを使いながら一日中発動したとしても、稼げる経験値は一日数千程度。いえ、おそらく三千に満たないでしょう」「今見た感じだと魔術公式もとんでもないものね……真似出来る人間はいないし、そもそも十万なんて魔力を持ってる存在なんて限られてるし、確かに使えないわね」「えぇ、なので魔技の再確認と、魔技の可能性を考えた方が建設的だなーと思ったんです」「魔力の方向性、魔力の台、隠者の安全地帯、十の魔……それ以外の魔技って事?」「えぇ。勿論、現在ある魔技も、更なる可能性を考えてます」「具体的には?」「一番可能性があるのは十の魔……ですかね」「一番可能性がないと思うのは気のせいかしら? 何? 足の指で魔法陣なり魔術陣なり描くつもり? ………………何よその顔は?」「バカな、どうしてわかったんだ? って顔してません? いいでしょう? 名付けて、二十一の魔っ!」 俺が人差し指を立てて言うと、アイリーンはその指を掴み、強く握った。「この! 一は! 一体何の一なのよ!?」「流石に耳で描くのは無理なので、両手足の指以外で描けるところを探したんです。そしたらありました! どうです? 凄いでしょう!?」「それは……はぁ。聞きたくないけど、聞いてから判断するわ…………」「尻文字です」 瞬間、アイリーンは俺の指をグイと捻った。「あいた!? ちょちょちょちょ! 流石に人差し指一本でアイリーンさんの全力は無理ですって! てか、何で全力出すんですか!?」「靴脱いで尻振りながらルシファーに勝てる訳ないでしょう!」「何言ってるんですか! ちゃんと手の指も――あ、そうだ舌も動かせば二十二になりますよ! あだ!? あだだだだだだっ!? あの!? 痛いんですけど!?」「もしそれでルシファーに勝ったら、私が絵本作ってあげるわよ! 『尻魔法士の伝説』ってね!」「おぉ、それはいいアイディアです! きっと子供たちは尻魔法士の伝説に――」「――憧れる訳ないでしょう!」「いってぇええええええええええええええっ!?」何故アイリーンが俺に怒りを見せているのか皆目見当もつかないが、どうやらこの案は失敗に終わりそうだ。 結構自信あったのだが、冷静に考えてみると、ルシファーに真似されては俺に勝ち目が薄くなってしまうからな。なんたってルシファーも十の魔が使えるんだ。 ならば、ルシファー自ら尻魔法を真似するくらい訳ないだろう。 流石アイリーンだ。ちゃんと敵に魔法を奪われる事を想定している。正に現代の賢者というべき存在だ。俺もトゥースも見習わなくてはいけない。「それで!? 別の魔技の可能性って何なのよ!?」「あ、筋魔力と、魔式の書換、それに俯瞰の中点の事ですかね?」 俺がそう言うと、ようやくアイリーンはその手を放してくれた。そして、目を丸くした後、腕を組んで少しだけ恥ずかしそうにしながら言ったのだ。「な、何よ。まともそうなのがあるじゃない……」 ふふふふ、そうだろうそうだろう。「最初の以外」 はて? 最初はどの魔技について言ったんだっけか?