そのようなジェスチャーをされても「駄目です」と首を横へ振ることしかできないよ。があん!という顔をされても、特殊任務を失敗したのなら報酬は諦めないといけない。 ただ、今回ばかりは罰ゲームで終えるのも可哀想だ。「じゃあ、今夜の夕飯は天丼にしようか。お店より味は落ちるだろうけど、大丈夫かな?」 そう耳元へ囁くと、ぱっと少女は身を起こした。 紫色の鮮やかな瞳を丸くし、そしてもう一度、甘えるよう首根っこに抱きつかれてしまう。柔らかな頬をこすりつけ、耳元へぽそりと「好き」と囁かれると……僕も少しだけ体温を上げてしまうね。 ただ、好きなのは天丼なのか僕なのかは分からなかったけれど。「ほれ、向こうで氷を砕いたデザートがあるようじゃぞ。かき氷と言うらしい」「……ウリドラ、夕食は、それで良いんだね?」 にこりと笑顔を向けると、黒髪美女は珍しくブンブンと首を横へ振った。 しかし、それにしても……。 ああ、やっぱり、甘いものには勝てなかったか……。 少女の手を引きながら、そんなことを思う僕だった。