その後、なんとか学校から出て、二人は帰宅の途につく。その時に凛子は、宏昭がマンションで一人暮らしなのと自分の家が近所なのを知り、一人静かにほくそ笑む。「ふっ・・・。姉弟の愛の巣か、これは滾るな」 昨日の楓の様に、身勝手な妄想に耽る凛子。幸せな未来を頭の中に描いていた凛子だが、人生はそう甘くはない。散々な目に遭った宏昭に、剣道はもういいですと言われ、がっくりと肩を落とす。それでも諦めずに毎日教室に来ては勧誘しているようだが。 しかし、本当に誰にも気付いて貰えなかったのか?本当に誰にもバレなかったのだろうか?答えは否。ベッドを囲むカーテンで中の様子は見えない筈だった。わずかに中が覗ける程度に開いたカーテンの隙間に向かって窓の外から、ある女生徒のスマートフォンのカメラレンズが、ジーッと二人の情事を記録し続けていた。