「――ふぅ……」 俺は自分のパソコンにウイルスを入れて動作を確認すると、一息をついた。 ……なんで、ウイルスを自分のパソコンに入れるかだって? 決まってるだろ、元々持っていたアンチウィルスソフトのAIに、自分の持つ簡単なウイルス情報を参照して抗体を作る機能を追加してみて、やっちも無い新しいウイルスを防げるか確認しているんだよ。 もちろん、必要なデータは外付けハードディスク(パソコンのデータ記憶装置がパソコンの外に出た物)に全てデータを移しているし、俺が自分で作った新種のウイルスで試している。 結果……? ……うるさい、失敗だ。 中身の画像データ全て喰われたよ……。 ――そんな一日二日で出来るか! ……ん? なんでウイルスを作れるのかって? というか、それを使って企業を襲い、そしてそれを撃退するプログラムを買ってもらってるのかって? そんな事するか! それは面白おかしく流された噂だ! まぁ、実情は流石に知らない。 ……俺の交友関係なめんなよ? ネットですら、花姫ちゃんしか友達がいなかった俺だぞ? 仕事上話は聞くことがあっても、真実まではわからないし、興味もない。 ただ……そうだな――何故俺が、普通なら必要が無いそんな技術を持っているのかについて話す前に、俺の過去の話をしよう。 そもそも、俺と平等院システムズは実は切っても切れぬ、深い関係にある。 ……いや、あったが正しいか。 今回俺は2000万という餌につられて今回の依頼を受けたが、もしかしたら、それが100万でもひきうけていたかもしれない。 あの男が馬鹿な事をしたせいで俺は頭に血が上って断ってしまったが、あのプログラムだけは他の人間に触らせたくなかった。 それほど、俺にとってあのプログラムは思い出深い大切な物だったのだ。 とは言え、前に依頼内容を話した時に気付いているかもしれないが、平等院システムズの持つアンチウィルスソフト――新種のウイルスを覚えていき、自動に抗体(人間の体での例え)を作成するAI機能を搭載したアンチウィルスソフトは俺が作った物だ。 そして、それはKAIという存在が生まれる事にも繋がる話。 そう――これはKAIの誕生の物語であり、俺と恩人に関する物語だ。