「イヴも大変だなぁ。あたしが暗殺の才能ねーからよ、あたしの分も頑張ってんだもんな。すまんすまん、ハハハ」 しょぼーんとしていたら、エルさんが話しかけてきてくれた。冗談を言っているんだと分かる。嬉しい!「ぁ……うん……ぇ、っと……ん、ばる」「あん? わりぃ、何だって? 全然聞こえねぇ」「……ぁ……ぁうぅ……」「こら! エル姉、イヴさんをいじめない!」「はぁ!? いじめてねーよ!」「言い訳しない! 行くよ!」 …………ああ、またやってしまった……。 皆と仲良くしたいけど、いつもこうなっちゃう。だってこの歳までパパとママ以外の人と会話したことなんてなかったんだもん。困ったもんだぁ……。 声がすごく小さいから何度も聞き返されるし、無口だなって勘違いされちゃうし、自分から話しかけるなんて絶対無理だし、笑おうとしても顔が引きつっちゃう。はぁ……どうせ私は内気で引っ込み思案で無口で無表情な白い悪魔の操り暗殺人形ですよ、ええ。 こんなのじゃ、いつまで経っても友達なんて無理なのでは? と、いうかっ! ご主人様とお話しするなんて、一生かかっても無理なのでは!? ひえぇ……。「イヴ。こちらへ」「……は、ぃ」 ユカリ様の声で我に返った私は、俯きながら返事をして後を付いていった。 向かう先はお庭。ユカリ様はいつもここで私に【糸操術】の運用法を教えてくださる。私だけ調査に行けないんだもん、仕方ないよね。「落ち込むことはありませんよ。貴女は私が見てきた中で二番目に素晴らしい糸操術の使い手です。自信を持ちなさい」「は、はい……」 やったやった~、ユカリ様に褒めてもらえた。小っちゃい頃から座敷牢でずーっと糸ばっかりいじってて良かったぁ。 ああ、でも私より上手い人がいるんだなぁ……やっぱりユカリ様かな?「一番目が気になるという顔をしていますね」「ぇ……いぇ」「最も素晴らしいのはご主人様ですよ。まだ覚えていらっしゃらないと思いますが、見なくとも分かります」 わぁ、確かにそうかも! ユカリ様は冗談が上手いなぁ。それにご主人様のことをお話しする時は、なんだかちょっぴり幸せそう。こっちまで温かい気持ちになってくるかも。思わず笑っちゃうね!「え、へ……ひゅへへぇっ……」「…………そんなにつまらなかったですか、そうですか」 あ、あれ? そんなことないですよ? 面白かったですよ?「今日の訓練は覚悟していてくださいね、イヴ」「……ふぇぇ……!」