このような光の文字をたくさん並べれば、あたかも本物のレベルボードが出現したかのように見える。偽造できる。 それを俺はアマミにやらせたのだ。「アマミ、レベルボードを偽造するのにどれくらいかかった?」「ん? たしか1週間ですねえ。あれ、結構難しいんですよ? 同じ大きさの光の球を大量に作った上で、精密に縦横に並べないといけないんですから。厳密には違いますけど、ほとんどオリジナルの魔法のようなものです。ふふふ、そんな無茶なことを12歳の女の子にやらせるんですから、本当、ジュニッツさんは鬼みたいな人ですよねえ」 アマミはそう言って、クスクスと笑う。「うるせえ。でだ、その1週間の間、お前はこんなことを言いながら、偽造を試していただろ。覚えているか?」 ――「まずは小さな光の球を出すところからですね。 ―― 魔力を込める量を極小に抑えれば、いけるでしょうか? やってみましょう。ん……。ダメですね。光が出て来ません。そもそも込める魔力が少なすぎると、魔法自体が発動しないのでしょう。 ―― となると、最初だけ魔力をちょっと多めに込めて、それからすぐに魔力を抑えればいいのでしょうか? やってみましょう。ん……。ダメですね。光が大きすぎる。魔力を込める量か、タイミングか、リズムか……何かがまずいのでしょう。 ―― であれば、今度はタイミングをずらして……」 「あの時、アマミは膨大な数の実験を行っていた」 難しい言い方をすれば『仮説→実験→検証』となるが、要するに『成功するまで、あれこれやってみる』ということだ。 まず、『魔力を込める量を極小に抑えれば、いけるでしょうか?』と仮説を立てる。 次に、仮説が正しいか確かめるため、『やってみましょう。ん……。』と実験をしてみる。 最後に『ダメですね。光が出て来ません。そもそも込める魔力が少なすぎると、魔法自体が発動しないのでしょう。』と実験結果を検証する。 そして、分析結果を踏まえてまた新たな仮説を立て、実験をし、結果を検証する。 よりシンプルに言うなら『試行錯誤』である。 その試行錯誤を1週間の間、実験に成功するまで(つまり偽造に成功するまで)延々と繰り返していたのだ。「要するに、あの時のアマミは、ひたすら魔法の実験を繰り返しながら、正解に近づいていった。だろ?」「ええっと……あまり意識はしていなかったのですが……。 わたしにとって今まで、魔法というのは、スキルボードから取得した魔法をそのまま使うものだったんですよ。 でも、ジュニッツさんの鬼みたいな要求に応えるには、それじゃあ無理で、それで自然とああいう行動をとってしまったんですが、言われてみれば実験ですねえ」「鬼みたいは余計だ」「じゃあ、鬼そのものですね。かわいい女の子をこき使う悪鬼ですよ」「何をわけのわかんねえこと言ってやがる」 俺はそう言った後、一息つき、それからこう言った。「で、これが答えさ」「え?」「今のが答えさ。わかるだろ?」「えっと……あっ!」 アマミは気づいたようだ。「わかっただろ? そうさ。妖精王もアマミと同じことをやっていたのさ。 妖精王は神から魔法を授かったんじゃない。 何度も実験して試行錯誤を繰り返しながら、オリジナル魔法を自力で開発したんだよ」