だが、ジークルーネが休養中となれば、日々の訓練はかなり楽になったし、何より他の連中を相手に無双できる。ヒルデガルドにとってはまさにこの世の春であった。それがまだまだ続きそうだというのだ。勇斗の直盃の内定といい、最近、いいことばかりだとご満悦のヒルデガルドであったが、「そうか。ならちょうどいいな。わたしの訓練に付き合え」「へ?で、でも、ルー姉、その腕じゃ剣持てないでしよう?」「だからこそ、だ」決意の表情とともにぐいっと襟首を掴まれ、ヒルデガルドは引きづられていく。「え、え、えええええつ」短い、春であった。「ふうつ、とりあえず、なんとかなったな」かっての《虎》の族都ガストロープニルの玉座にどかっと腰掛けつつ、勇斗は大きく嘆息した。