孫、姪
今や子供は、貴重品。欲しいからといって手に入れられる存在ではありません。ということは将来的にもっ
と貴重になってくるのが、「孫」という存在。
「なんでこんなに可愛いのかよ~」
と、その名も『孫』という演歌に歌われた時は「そんなものが演歌の主題に!」と度肝を抜かれましたが、あ
の歌がヒットしたのは、間もなく二十一世紀になろうかという頃。その頃には既に、日本の少子高齢化は進み
始めており、孫の希少性は認識されていたのでしょう。そして、演歌『孫』にグッとくるような高齢者も増加し、
また平均寿命も延びて、孫を愛でていられる年数も増えたせいか、この歌はミリオンヒットを記録したので
す。
そして、今。孫はやはり貴重品となっております。私の世代ですと、二人きょうだいの人が最も多く、次いで
三人きょうだい、一人っ子という感じなのですが、友人達を見回しても、きょうだい全員が結婚して子供を持
っているという家族は、極めて少数です。
たとえば、私の同級生仲良しグループを見てみましょう。私の場合は、兄は結婚して子供がいるけれど、妹
の私は独身・子ナシ。他のメンバーを見れば、「一人っ子で、結婚しているけれど子ナシ」のAちゃん、「本
人は独身で子ナシ、お兄さんに子供はいるが離婚していて親権は元妻側に」というBちゃん、「本人は結婚
して子供も二人いるけれど、姉はバツイチ、妹は独身」というCちゃん、「本人はバツイチのシングルマザ
ー、弟は結婚して子持ち」のDちゃん、「本人もお兄さんも結婚していてお兄さんには子供もいるけれど本人
は子ナシ」のEちゃん……と、家族それぞれ、色々な事情がある。「本人も妹も結婚して子持ち」という貴重
な人材・Fちゃんもいるのですが、彼女も夫とは別居中だったりするし。
このような状況を見ていると、孫のみならず、イトコというものも今は貴重品であることがわかります。私の場
合、父方と母方と合わせると、イトコは九人いるのです。しかし私の姪の場合、イトコは母方に一人いるだ
け。私を含め、姪にとってのおじ・おばメンバーの年齢層を考えると、この先にイトコが増えることも考えにく
いわけで、彼女は「きょうだいゼロ、イトコ一人」の状態でこの先を生きていくことになるのです。
ふ
不
が
甲
い
斐ない
叔母さんでごめんよ、という気持ちになろうというもの。
我々子ナシ族にも、三十代の頃には「親に孫を見せてやりたい」という思いは一応、ありました。親が五十
代にもなると、親の友人の間でも、孫ができておばあちゃんという肩書きを得る人が出てきます。携帯の待ち
受けになっている孫の写真を見せられたり、「孫が可愛い」という話を聞かされたりすれば、「自分も孫が欲し
い」という気持ちにもなりましょう。
その頃は私の母も、
「子供を産むのなら、早いうちにしてよね。あまり年をとったら私、孫の面倒がみられなくなっちゃうわよっ」
などと、私に言っていたのです。孫の面倒をみなくてはならないことが、祖父母にとっては負担であると言
いますが、孫ナシ族にとっては「何をぜいたくなことを言っているの。孫がいるだけ、幸せじゃないの」という
感じか。