カイン様が驚いた顔でそうおっしゃっていて、心なしかちょっと元気がないように聞こえた。 カイン様、落ち込んでる……? でも確かに私も、兄弟みたいに思っているアランやカイン様の結婚とか婚約とかの話を聞いたら、ちょっと、ショックかもしれない……。 私ったら、マザコンだけじゃなくて結構ブラコンなのかも。 と思って、実の兄のシュウ兄ちゃんの顔がよぎった。 おかしい。 シュウにいちゃんが誰と結婚しようがショックを受けなさそうな自分がいた。 いや、相手の方が気の毒に感じて、ある意味ショックかもだけど。 まあ、シュウ兄ちゃんだし、仕方ないか。 と、納得したところで、カイン様が私の耳元に顔を寄せた。「婚約者の話はアランも知っているの?」 2人でお話しているアイリーンさんとバッシュさんに聞こえないような声でそう尋ねられて、私もカイン様の耳元に顔を寄せた。「実は私も婚約の話、初めて聞きました。多分バッシュ様の嘘だと思います」と答えると、驚いた顔をしたカイン様は微笑んで、「きっとリョウが困っているのを助けてくれたのかな。母の押しが強くてごめん」と小声で返してくれた。「まあ、アランが知っていたら、きっと……」 とつぶやいたカイン様が、何かを想像したように苦笑いを浮かべたので、思わず首をひねった。 一体アランが知ったら、なんだというのだろう。 あ、それよりも、私、カイン様にお会いしたら、お伺いしたことがあった!「そういえば、カイン様は騎士爵を取得したら、領地に帰る予定だと昔お伺いしたのですが、これからはレインフォレストに?」 もともと、騎士爵を得たら、レインフォレストでアランの手助けをするのが夢だって、言っていたカイン様。 おそらく想像よりも早い段階で得た騎士爵なわけで、まだアランが伯爵位を継いでもいないわけだし、どうするのだろう。「それが……少し迷ったが、まだ城にいることにしたよ。まだアランも伯爵位を継いではいないし、もうしばらくはここで精進しようと思う。ヘンリー殿下のこともあるしね」「お城にのこるのですか? ヘンリー殿下の護衛を続けるのですね?」「そうだね」 と少し声を落としたカイン様は、ちらりとアイリーン奥様とバッシュさん達アダルト勢が会話を弾ませているのを見てから、彼らに声が聞こえないように距離をおいて「リョウ覚えているかい? 私が大雨の災害時に、ヘンリー殿下の誘いを断ってレインフォレスト領地に帰ったことを」と言った。