商人悲喜交交 王都へ行く途中、ゲリラ豪雨のような大雨に見舞われて、街道に架かっていた橋が落ちてしまった。 水が引いたら、ゴムボートで渡る算段をし、道端に家を出して一泊したのだが――。 プリムラが家の前で始めた露店。その前で客達が酒盛りを始めてしまい、結局は深夜まで続いたようだ。 ニャメナも一緒に飲んでいたので、そのうち戻ってきてベッドで寝るのかと思っていたのだが、いつまで待ってもやってこなかった。 ――そして朝。念の用心のために出した丸太のバリケードをアイテムBOXに収納する。 そして道端には、酔いつぶれたと思われる男たちが寝転がっている。「なんだこりゃ……」 ニャメナを探すと、草むらで裸になり大股開きで寝ていた。当然、ゴニョゴニョが丸見えである。「おい、ニャメナ。起きろ」「う~ん、旦那ぁ――もう食えない……」 何を寝ぼけているんだ。そんな事をしているうちに、道端で寝ていた男達も起き始めた。「あんたら、こんな所で寝て大丈夫だったのか?」 俺にそう言われて、男達は我に返ったのか、体中を撫でまわし始めた。 金銭等、取られた物がないかチェックするためである。だが、幸いな事に、物をなくした者はいなかったようだ。 この世界で、道端なんかで無防備に寝ていたら、何をされるか解らんからな。 そのぐらい迂闊な行為と言えよう。 その迂闊の極みにいるニャメナを起こす。「おい、ニャメナ!」 ニャメナの毛皮に指を埋め身体を揺さぶると、彼女が目を覚ました。「……うん……」「お前、こんな格好で寝て――まさか輪姦されたんじゃないだろうな?」 俺の言葉に、ニャメナは、そのまま起き上がると胡座をかいて、身体中をポリポリと掻いている。 何を言われたのか、解らないよう顔をしていた彼女だったが、徐々に目が覚めてきたのだろう。「そこら辺の男が束になっても、俺を押し倒したりは出来ませんよ――ふあぁぁぁ!」 彼女は大きなあくびをした。「それならいいが……」「心配してくれるんですか?」「当たり前だろ」 その言葉を聞いたニャメナが俺に抱きついてきた。裸なので毛皮がもふもふで、実に心地よい。「なぁ、ニャメナ」「なんだい旦那ぁ」「しっぽの付け根と前を同時に弄ったらどうなるんだ?」「そんな事されたら俺、飛んじゃうかも……」 そんなアホな事をやっていたら、ミャレーが家から出てきた。「ぎゃー! 何やってるにゃ!」「なんだよ、クロ助いいところで。もうちょっと寝てろよ」「そうは、いくかにゃ!」 アネモネとプリムラも起きてきたので、悪ふざけはこのぐらいにして、朝飯にする。 朝飯は、昨日の商売で売っていたスープの残りと、シャングリ・ラで買ったパンだ。 ニャメナに話を聞くと、大店らしき商人達は、手代が迎えにやってきて、自分達の馬車へ戻ったらしい。 最後まで残って、道端で寝ていた奴らは、1人で商いしている連中のようだ。 馬車とか荷物とか、放っておいて平気なのだろうか? だが、俺達が食事をしているのをみて、スープやパンを売って欲しいという奴らがやって来た。 そうなると黙っていられないのが、プリムラだ。 俺からインスタントスープとパンをもらうと、食事もそこそこに家の前で売り始めた。彼女は、俺が粉のスープの素を持っていると知っているからな。 どうも目の前に客がいると我慢出来ないらしい。 だが商売をしている彼女は、本当に楽しそう。「商売をしているプリムラは、生き生きしているよな」「ウチ等が、狩りをしている時と同じにゃ」「そうだよなぁ」 多分俺は、工作をしている時とか、鉱石を掘っている時には、あういう顔をしていたんだと思う。 プリムラに商売は任せて、俺達は川の方へ行ってみる事にした。 まだ流れは速いが、水の濁りはなくなり、大分水量も減っている。これなら、ゴムボートで渡れるだろう。 ちょっと上流へ行ってから斜めに下ればいい。確かゴムボートは5人乗りだから――大人4人と子供1人、そして森猫、多分大丈夫だろう。 一旦、家に戻り、出発の準備をする。 戻ると、プリムラが汗を流して商売をしていた。