「獣人差別かよ。酷いな」「まぁ、いつもこんなもんにゃ。ウチ等は毛が抜けるからにゃ~」 ミャレーはいつものことらしくて、余り気にはしていないようだが。 仕方なく、市場の露店で飯を食う。 市場は、ダリアと同じように人の渦状態――景気は良いらしい。良い事だ。 出てきた料理は出汁も取らずに、野菜と肉を煮ただけのスープと硬いパンだ。 まぁ、こんなのが、この世界では普通の料理だ。 アイテムBOXから鰹だしを出してスープに振り掛けた。そして胡椒を少々――。「若干まともになったかな」 他の客から見えないようにして、アネモネとミャレーの皿にも鰹だしと胡椒を入れてやる。「美味しくなったね」「にゃー」 アネモネとミャレーがヒソヒソ声で話しているのを聞きながら、スープにパンを浸して食べる。 とりあえず――イマイチながらも腹は満たされたので、市場を散策する。 品揃えはダリアとあまり変わらないかなぁ。 しかし、こう見ると俺が露店に並べていた品物がかなり突飛な物だったと改めて気づく。 そりゃ食いつく奴が沢山いるわけだよなぁ。 口直しに露店でリンカーを30個買う、一山銅貨3枚(3000円)だ。「甘くて美味しいね」 リンカーを頬張るアネモネが、ミャレーに微笑みかける。「にゃー!」 このリンカーが、市場で売っている果物の中では、一番甘みと酸味のバランスが取れている。 野菜はイマイチな世界だが、この果物は美味いと思う。 ついでに野菜も色々と買う。味はイマイチだが家の畑に野菜が育つには少々時間が掛かる故、仕方ない。 リンカーを食いながら市場を回り、外れに道具屋があるのを発見した。 こいつは、お宝の臭いがぷんぷんするぜ――入ってみるか。 看板には【スノーフレーク道具店】と書いてある。「ちわー」「はいよ」 中から出てきたのは、カーキ色のローブを被った婆さん。ローブの中は黒い服だ。胸には大きな緑色の宝石が光っている。 歳は不詳だが結構な歳だろう。だが随分と達者そうだ。 デカい釜で、ぐつぐつと怪しげな物を煮ている姿がよく似合いそうな気がする。 この婆さんがスノーフレークって名前なのか? その割には真っ黒なのだが……。