こんな世迷言なんてすぐぼろが出るわけだけど、濡れ衣を着せられたままいつまでもいられるわけない。股間にかかわる、じゃなかった、沽券こけんにかかわる。 ………… ……あ。思い出した。「……佳世、言いたいことはそれだけか? なんで本当のことを言わない」「本当のことだから! わたしの相手は祐介だけだから! なんで、なんで祐介までそんなこと言うのぉぉぉ……」 うっざ、泣き出しやがった。 こうやって冤罪は作られていくんだな。同情を引くのに女の涙ほど有効なものはない。 ──なんで俺は、佳世に裏切られた挙句に、こんな糾弾を受けないとならないんだろう。本来なら、俺が泣きたいくらいなんだぞ。 決ーめたっと。 もう知ったことか。全部暴露してやる。「……なら、仕方ありませんね。佳世さん、そこまでおっしゃるならば、皆様に真実を明かしたいと思います。しばしお待ちを」「え……」 豹変した俺の態度を受け、佳世が泣くのを止めた。 俺はそう言っていったん部屋に向かい、以前録音したものを公開すべく、修羅会議場へ再度舞い戻る。『……浩史君と知り合ったのは、中学校の時の全中の東北ブロックの時』 ICレコーダーであの時録音した佳世の声が、静まった会議場に響いた。「……さて、皆様。今の声が誰のものか、お分かりかと思いますが」「ま、まさか……」 佳世が真っ青。みんな沈黙。なんかすごく楽しくなってきて、俺は続きを再生した。『それまで、ね。祐介のことは好きだったけど、それが恋なのか、自分でもわからなかったの。そんなとき、すごくバスケがうまい池谷君に声をかけられて、いい気になって、有頂天になって、一気に激しい感情が下りてきたんだ』「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 うるせえよ佳世。せっかくの証拠音声を自分の叫びでかき消すな。 仕方ない、ボリュームを最大まで上げようか。『これが恋なのかもしれない、そんな錯覚をしたわたしは、池谷君に誘われるがまま何度かお隣県で二人きりで会って、求められるがままに許してしまった』「うそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」『……ごめんなさい、ほんとバカだった。夏の合宿の時に、また一線を越えちゃったの。あの時のわたしは、中学時代に戻ってしまっていた。罪悪感はあったけど、でも、祐介なら許してもらえるかもしれない、そんな甘い考えもあった。そうしてしばらくの間、溺おぼれた』「もうやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」『……この前。祐介の誘いを断って浩史君と会っていた時。あの時……浩史君に、避妊をしてもらえなかったの。安全日だったけど』「ちがうのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」