「認めよう。『剣師』ザイリード。貴様は紛れもなく、最高の剣士であり、その愛剣もまた、最高の剣であったのだと」『魔術師』はどこまでもいっても魔術師だ。剣士ではない。故にその心根を真に理解することなどは不可能である。けれど、それでも男が最期まで魔剣の力を使わなかったことは、彼の誇りであり、何より魔剣を大事に想っているという証。 ならば、彼はまごうことなき、最高の剣士と言えるだろう。 己の在り方を貫き通し、己の剣を誇る。 それが、剣士としての究極の形の一つなのだろうということくらいは『魔術師』にも理解できた。何より、彼は自分と互角に渡り合った初めての剣士。 ならば、賛辞の言葉を送るのは当然のことだった。「カカッ。魔術師のくせに、妙なこと言うんだな。おれが出会ってきた他の連中とは、大違いだ」 だが……。「ありがとよ。思いっきり戦って、死ぬ最期にそんな言葉を聞けたんだ……おれの人生も、案外、悪く、ない……ものだったって……おれは、お前と戦って、ようやく理解できた……」 剣士として生き、剣士として戦い、そして剣士として死ぬ。 彼の人生は、それだけであり、それで十分だった。 今、ここに至り、それを再認識し、そして納得した。 ならば……もういいだろう。「あばよ、『万能の魔術師』……お前も、おれが出会った中で、最高の魔術師だったよ……」 悔いはある。当然だ。戦いに負けたのだ。後悔がない方がおかしいというものだろう。 生きたいとも思う。当たり前だ。何故なら死んでしまえば、もう自分の剣を振るうことができないのだから。 けれど、だ。 それでも、納得はできたのだから、それ以上を望むというのは、あまりに欲張りというもの。何より、自分の剣を、自分の剣技を認めてくれた者に看取られるのだ。 ならば、それはきっと、マシな死に方と言えるだろう。 既に意識が遠のく中、彼は『魔術師』の言葉を聞く。「ああ。眠るがいい、ザイリード……。貴様の剣を、ワレは一生忘れることはないだろう」 それが、彼が聞いた最後の言葉。 こうして、『剣師』ザイリードは、剣に捧げた人生の幕を閉じたのだった。