錬金術師ギルドの前に着くとまず大きさに驚いた。「おー……さすが王都、でかいなあ……」看板はアインズヘイルのものと変わらないのだな。ってことはこれがどの街でも錬金術師ギルドである証ってことか。「おはようございます」中に入って受付のお姉さんに挨拶を交わす。アインズヘイルと違って数人の錬金術師が談笑をしているようだ。「はい。おはようございます。本日はどのようなご用件でしょうか?」「えっと錬金室のレンタルをしたいのですが」「承りました。ギルドカードを拝見してもよろしいでしょうか?」「はい」丁寧な対応である。「アインズヘイルのA級錬金術師様ですね。どうぞこちらへ。錬金室のご利用料金はかかりませんので」そういえばリートさんにA級になると錬金室代はかからないといわれたが、他所の錬金術師ギルドでもかからないのか。そのまま案内されるままに錬金室に入る。作りはあまり変わらないらしい。必要最低限の物が置かれているだけのようだ。「それではごゆっくり」「ああ、ありがとう」さて、と……。やりますかね。錬金を始める前にまず下準備である。今回作るのは霊薬なので、前回何故作れたのかわからないが同じ方法で試してみる。すなわち、既知の魔法陣エクスペリエンスサークルである。ということで取り出したのは前回スキルを発動した際に自動手記された魔法陣が書かれた紙。そしてスキルを発動する前にしっかりと在庫の薬草類を確認しておく。旅に出る前にアイナ達に頼んで取ってきてもらったばかりなので数が多い。多分これで霊薬は作れると思うのだが、何がどれくらい必要なのかは知っておいた方がいいと思う。という訳で内訳。『薬体草 54 薬体大草 23 薬魔草 48 薬魔大草 25 毒体草 31 毒体大草 18 沈省草 8 薬花ハーブ 15 レッドオリブル 8 ブルーリンプル 6 イグドラシルの葉 15 イグドラシルの茎 6 イグドラシルの蕾 6 イグドラシルの花 5 イグドラシルの種 4』といった具合だ。沈省草は荒れた心を落ち着かせる効果を持ち、薬花ハーブは薬の効力をあげるいわばブースト。レッドオリブルは赤いオリーブで、ブルーリンプルは青いりんごだ。こちらは薬効があるわけでは無いが、お土産にと貰ったのである。そしてイグドラシルシリーズ。イグドラシル、と聞くと身構えるものだがこの植物は特定の場所に咲くわけではなく、アイナ達が材料を収集してくれる森の深部などで運が良ければ遭遇できる代物である。下手をすれば森に入ってすぐのところにも咲いている可能性があるので、新人冒険者にとっては偶然当たる宝くじのようなものか。ともかく、集めようと思って集められる物ではないが、運次第では誰でも手に入るものなのだ。