冷静で居ようと思っていた。 優しくて包容力のある、トラストを癒してあげられる少女でありたかった。 だけど、言わせて欲しい。 いや、この世界に来たからこそ言ってやる。『貴方が誰を好きになろうと知った事ではありません。ですが、元とはいえ共に戦った恋人を悪く言わなくたっていいじゃないですか! 裏切ったのは貴方の方なんですよ!? なんで何も悪く無いトラスト様が暴言を吐かれなくちゃいけないんですか!』 感情が爆発していくのがわかる。 怒りを通り越して悲しくなってきた。 所謂半べそという奴で、目頭に涙が溜まってきている。 ああ! 本当に情けない! 自分の感情すら制御出来ないのか。『それを厚顔無恥にも嘲笑う! 信じてくれた人々を裏切って貶す、貴方という輩は罪悪感の一つも抱かない悪魔です! どれだけ傷付いた人がいると思っているんですか! どれだけ悲しんだ人がいると思っているんですか! この他者の心が理解出来ない悪魔! 生きていてはいけない存在です!』 こんなに人を罵倒するのは生まれて初めてかもしれない。 ゲームだった頃から溜め込んでいた鬱憤とでも言えば良いのか。 それ等を全て吐き出している様な、そんな感覚だ。「ありがとう……こんな風に怒ってくれる人が居てくれるから戦えるんだ」 オレの言葉とは裏腹にトラストは落ち着いていた。 本当に相手の暴言など気にしていないかの様だ。 けれど、痛くないはずがない。 どれだけ心が強くなっても、痛いものは痛いんだから。「ヘタレの分際で勇者気取りという事ですわね」「何とでも言えば良いさ」「アハハ、一丁前に余裕を見せているみたいですわ。ですが、私は知っているのですよ。貴方の弱点を」 弱点? 一気に冷静になっていく。 再び立ち上がったトラストに弱点は無い。 それこそ最強の勇者だと、オレは信じている。 精々今のトラストの弱点と言えばオレ位なものか。 けれど、トラストは弱点すら強さに変えられる男だ。「出ていらっしゃい、フィーリア」