「あ~、解りますぞ。ワシも若い頃のあの時に、借金でもして買っておれば……と後悔する事も多いです」 えんじ色の服を着た、ヒゲの爺さん商人が割って入ってきた。 それを聞いた他の商人も頷いている――どうやら、商人のあるあるネタのようだ。 新品の樽を買った商人が、手代を連れてきて樽を運んでいる。 それを見た、他の商人も樽を買うようだ。空樽だけで10樽売れ、金貨30枚(600万円)である。下手な商売より儲かる。 他にも樽が欲しそうな顔をしている商人もいるのだが、ここで買う余裕がないのだろう。 日が傾き始めた頃、獣人達が帰宅。手には獲物の鳩ぐらいの鳥が2羽ずつ握られている。 すでに毛が毟られて下拵えが出来ているようだ。「ケンイチ、これで唐揚げを作ってにゃ~」「俺のも!」「よっしゃ、今日は唐揚げだな」 カセットコンロと鍋を出して準備をした後、獣人達がぶつ切りにした鳥に唐揚げ粉をまぶして、油で揚げる。 ジュワジュワと油の弾ける音と香ばしい匂いが辺りに充満する。「その料理も売ってくれ!」「俺にもくれ!」「こっちもだ!」 未だに残っていた客が叫びだした。「4個で銅貨1枚(1000円)!」 客の声にプリムラが反応した。売れと言われると、何でも売ってしまうのが、商人らしい。「よし! 買った!」「こっちもだ!」「俺にはワインをくれ!」「ちょっとちょっと、プリムラ~俺達の晩飯が無くなるだろ」「……しかし」「しょうがない」 シャングリ・ラから冷凍の袋パックされた唐揚げを買う。1kg入って1200円ぐらいだ。 それを3つ程買って、大皿に山盛りにする。客に売るならこれで十分だろう。 せっかくの、野鳥を使った出来たてアチアチの唐揚げを取られたくない。「アネモネ、この山を魔法で加熱してくれ」「解った、温め!」 すぐに、唐揚げの山がチリチリといいだし、湯気といい匂いが立つ。「ほらよ。出来たてだぞ」 嘘である。 だが、一斉に客が唐揚げに飛びついた。