見れば画面には色鮮やかな桜色をした着物が写っていた。となると僕としては実際に着るよう提案すべきだろう。「へえ、綺麗だね。ウリドラの力で再現できたりするのかい?」「お、そうじゃったな、もちろんわしならば出来るぞ。どれ、食事のあとに着せてやろう」 パチクリと瞬きをするマリーは、自分も着れると思っていなかったらしい。元から洋服に興味のある子だ。みるみる頬を紅潮させ、期待に胸を膨らませてゆく。 そんな少女へ僕は声をかけてみよう。とびきり今日という日を楽しめるように。「なら2人のデートプランは決まったかな? 純和風の庭園で、竜とエルフは着物を着て散歩をする……というのもファンタジーで素敵かもしれないよ」「行くっ、行く行くっ! ウリドラ、一緒に遊びに行きましょう?」 彼女へ呼びかけると、竜はもちろんだと言いたげに瞳を細め「にゃあ」と黒猫のように鳴く。くすぐったそうに笑う表情を見て、きっとウリドラも僕と同じように少女の反応を見て楽しんでいるだろうと分かる。 保護者のようだけど、可愛い子がこういう顔をするだけで、僕ら大人はほっこりとした気持ちになるものだ。