「わしの身体はのう、知っておると思うが精霊に近しい。ぬしもそうじゃ。エルフは妖精に近しく、人とはまた異なる存在なのだ」 そう、時折忘れてしまいそうに……いや、忘れたくなるが少女は人とは異なる。触れ合うことも会話をすることも出来る。しかしどこか人間とは根本から食い違うのだ。 そのような理由で、人とエルフが結ばれるなど非常に稀なことと認識している。「ほれ、しょげるでない。だからこそぬしはまだ子供なのだ。あやつを深くまで触れたくて、少しずつ身体を変えておるのじゃろう」 その言葉に、ぱちぱちと少女は瞬きをする。何を言われたのかよく分からず、さりとて聞き逃すことも出来ない。重要な何かを竜は告げたのだ。「あせらずとも良い。マリーはいつかあの小僧と番になるのだ」 ジンと頭の芯が痺れるのを少女は覚える。 竜の言葉からは真実が伺え、それは将来の姿を垣間見せるもの。 今まで形にできなかったことが、竜の一言により形を成してゆくのを覚える。魔導竜は様々な魔法を操れるが、これこそがまるで魔法のようだ。 ……が、少女は憂いをこめた息を吐き、膝を抱えて小さな身体をさらに小さくさせる。「うん、どうしたのじゃ?」「あの人は……きっと私に魅力が無いと思っているの」「ふうむっ? や、どうしてじゃあ。わしの目から見ても可愛らしいと思うがのう……」 恐らくは誰から見ても、あの青年が少女を大事にしているのは分かるだろうに。しかしマリーは唇を突き出し、子供のような顔をする。「ほとんど彼からは触れてこないの……。さっき言った通りキスもまだ。たぶん女としても見られていないと思う」「あ、ああー、それじゃ。わしが先ほど言いかけたのは」 エルフはほんの少しだけ瞳を竜へと向ける。ただしそれはジト目と言ってよいほど疑わしげなものだ。つい先ほどまでは信じてくれていたというのに、とウリドラは内心でため息を吐いた事だろう。「あやつはのう、ぬしを大事に思うあまり臆病になっておる」「……どういう意味、かしら?」「ふ、ふ、分かりやすく言えば、脈ありという奴じゃ」 アメシスト色をした瞳は開かれ、鮮やかな色彩を見せる。まるで花が咲いたよう、と青年は思うそうだ。彼が見とれる理由をウリドラはほんの少しだけ理解したに違いない。「ほ、んと……?」 不安げな声で言いつつも、身をずいと寄せてくる。 その綺麗な瞳には竜であろうとも魅力を覚えるらしく、少しだけ頬を赤くしてしまう。「なに、本当かどうかは簡単に分かる。気になるなら後で試してみるがよい。例えば…………」 自信たっぷりなその言葉に、マリーはくらりと眩暈を覚える。いや、それは単にのぼせたからだ。 ふらーっと身体を斜めにしてゆく少女を、ウリドラは静かに支えてやる。それから外へと運び、長椅子へと横たわらせた。