なんでも結構前に新しいパンダが産まれたって事で、大々的にニュースまでやっていた。 そのパンダが見られるようになった時は抽選で選ばれた人しか入れず、それでもかなりの人数が並んでいた。 俺はそれを見てパンダを見に行きたいとか、羨ましいとか思ったんじゃなく、こう思った―― パンダ可哀想だな……。 ――と。 見世物にされて居るパンダが当時の俺には不憫ふびんで仕方なかったのだ。 なんせ俺も中学時代視線を集めた事が有るからな……。 まぁ、パンダに向けられるような視線とは真逆の意味をもっていたが……。 でも、今ならパンダの気持ちがわかる……。「お兄ちゃん、見えない……」 そう言って桜ちゃんが悲しそうに、俺の方を見上げてきた。 現在パンダを見る人が一杯前にいるため、俺の身長ならともかく、桜ちゃんの身長からだと見えないのだ。 ただ、別に俺はこれでパンダの気持ちがわかると言ったわけではない。 これではただ外から傍観をしてるだけだし……。 そうじゃなくてな――「どう思う? あれ、本当に兄妹?」「う~ん、お兄さんの方はモデルの様にカッコイイし、妹さんの方も子役みたいに可愛いからね……。でも……似てないよね?」「なぁなぁ、あの男と入れ替わって、あの女の子に抱き着かれたいんだけど、どうすればいい?」「いや、それよりあの男の処分を優先すべきだろ」「ねぇねぇ、あの兄妹微笑ましいね」「そうか……? 俺としては、とりあえずあの男の顔面を一発殴りたい気分なんだが……」 ――こう言う事だ……。 パンダが見えなくて暇を持て余した他のお客が、軒並み俺達に注目しているのだ。 というか、さっきから男が話した時の言葉って、主に俺への憎悪じゃない……? 俺、君達に何もしてないよね……? ――桜ちゃんは相変わらずパンダが見たくて前の客の背中を見ているため、周りの視線には気づいていない様だ……。 もしかして……今日一日ずっとこんな感じなのだろうか……? クイクイ――「お兄ちゃん……」 ――と、桜ちゃんが俺の腕を引っ張りながら声を掛けてきた。 「どうかした?」 俺はそんな桜ちゃんの顔を見る。「肩車して……」 そう言って、桜ちゃんが上目遣いをしてきた。