シルヴィは冷たい眼差しを蓮司に浴びせて吐はき捨すてた。「シ、シルヴィ様!? この男が勝手にしたレイスとの約束はどうなるのです?」 エレナは泡あわを食って尋ねる。「知らん。本当に、目障りだ。あの男共には私から何とでも説明してやる」 シルヴィは鬱うつ陶とうしそうに手を振ふり払はらう。だが――、「…………」 蓮司は立ち上がらない。上半身を起こして、ベッドに腰こし掛かけたままだ。ひどく葛かつ藤とうした様子で、上うわ掛がけのシーツを両拳で握にぎり締しめている。「どうした、早く出ていかないか。それとも、この場で斬きり捨ててほしいのか?」 シルヴィは冷ややかに問いかけた。すると――、「………………った」 蓮司がぼそりと口を動かして何か呟つぶやく。「何?」 シルヴィは怪け訝げんな顔で訊き返した。「……すまなかった。シルヴィの言う通りだ。何も言い返せない」 今度は一応、聞こえる声で語る蓮司に――、「だから何だというのだ?」 シルヴィは淡々と問いかける。「……エステルを助けるの、俺にも協力させてほしい。助けたいんだろう? そのためなら何でもする。助けた後に今回の不始末も償つぐなうから」 蓮司は随ずい分ぶんとしおらしい態度で答えた。それはシルヴィが初めて目にした年ねん齢れい相応の少年染じみた蓮司の姿で――、「…………ふっ、ははっ、そなたもそのような顔をするのだな」 シルヴィはしばし呆ほうけた顔をすると、愉快そうな笑い声を漏らす。「茶ちや化かさないでくれ。俺は本気で言っているんだ」 そう言って、蓮司はキュッと唇くちびるを噛みしめる。「……すまないな。だが、そなたの助力は不要だ。気持ちは嬉しいが、やはりそなたはここを去れ」 シルヴィは苦笑して蓮司に謝罪し、そう告げた。その声こわ色いろは先ほどまでと打って変わって優やさしい。「……な、なんで?」 蓮司が動どう揺ようして尋ねる。