動物実験については,高レベルの暴露で統計学的に有意な生理的変化を認めた報告例はあるが,低レベルの暴露での実験例は見当たらなかった。なお,ラットを使って8Hz,120dBの低周波音暴露による脳-血管関門透過性や脳中アラキドン酸代謝の変化を調べた結果,直接大脳皮質に影響を及ぼすことを示唆する報告例があるが,人への影響に
ついての外挿は慎重に行う必要があり,その評価については,他の研究者による同様の実験の結果を待つ必要がある。このように,動物実験によるデータは少なく,高レベルの暴露による動物実験のデータを,低レベル暴露による人への影響のリスク評価に用いるには,今後,暴露時間,周波数,音圧などの暴露条件及び健康影響評価対象を変えるなどして,より多くの知見の集積をみる必要がある。