「調教師だって聞いたけど、本当だったんですね」「もう、そこら辺も内緒にしてくれって言ったのに」 まぁ、本当は調教師じゃないけどな。家の扉を開けると森猫が黒い身体をくねらせ中にするりと入った。「あそこにある板は、なんだい?」 女の1人が、太陽電池パネルに気がついたようだ。「ああ、あれは魔法に関する物だから、聞かないでくれ」「畑も、もっと広くするっぺ!」 畑を見たアリッサが大声を上げたのだが――。「俺1人なら、このぐらいで十分だよ。それに畑を広げて、作物が大きくなる頃には誰もいなくなるんだろ?」 だが、皆が黙る。 何故、黙る? 少々、先行きに不安を感じながらも、ここまで来て、いまさら追い返すわけにもいかない。皆で一緒に住むことになった。 本当に、マジデスカ? だが、この人数が住むとなったら、多少は手を入れないとダメだろうな。 先ずはスペースの問題だが、それは2段ベッドを購入して解決することにした。 女達が10人だから、2段ベッドが5つあれば良いだろう――ということで、シャングリ・ラを検索して、一番安いパイプベッドを2万円で購入した。 木製のベッドも4万円程で売っているのだが――この2段ベッドは、これっきりしか使わないだろうから、なるべくコストを抑える事を優先する。 このベッドは女達がいなくなったら下取りに出してしまおう。 力持ちのアリッサにベッドの運搬と組み立てを手伝ってもらう。 ただ、大人数でワイワイガタガタと騒々しいので、家の中にいた森猫は不機嫌そうに、シンクの前で丸くなっている。「これなら、上下で2人寝られるから、雑魚寝にならないで済むだろう?」「こんな立派なベッドを用意してくれなくても良いのに、旦那は人が良いって聞いてたけど、本当に人が良いねぇ。こんな人じゃ悪い女に騙されるんじゃないかと心配だよ」「別にお前らに心配されなくても大丈夫だ。その手の修羅場は、それなりにくぐっているから、騙されたりはしないから」「え? それって、どんな修羅場なんですか?」「あたしも聞きたいんですけど?」「あたいも~」 あ~非常に煩い。女が3人いれば、かしましいって言うが――それが10人だからな。 女子校の教師とか、こんな感じなんだろうな。「そんな事よりベッドの設置を手伝え」「「「は~い」」」 完全に乗りが女子校だ。 2段ベッドは買ったが、下に引くマットレスも買わないとダメか。 う~ん、一番安いマットレスが3000円か……こいつも10枚必要だな。 それとシーツだ。この世界では定番の麻のシーツを買おう。