深淵の知謀を働かせ、ティファは勝ち取った。アズリーの浅はかな決断を。 アズリーとは、世界規模で重要な位置にいる存在である。 そのアズリーから週に一回、二時間という時間を得たティファが、他の女たちより一歩先んじたのは言うまでも無い。 この噂は、一気に広まる。 そして、女たちは知るのだ。「くっ! ティファがっ!?」 リーリアが焦りを顔に浮かべ、「姉弟子を差し置いて……けど、上手くやったのは認めるよ……ティファ」 リナがティファを認め、「その手があったかぁあああ~~~~っ!」 フユが頭を抱えて叫び、「上等……で、ありんすぇ? ティファ」 愛刀小桜に春華の妖しい瞳が映る。 静観していたアイリーンがボソりと零す。「ま、よくやった方じゃない?」 ただティファの行動を褒めるだけ。 そう、褒めただけなのだ。アイリーンは知っていたからだ。 この後、アズリーに起こる事象を。 それは、ティファがアズリーとの契約を終えてから数時間後の事だった。「完済ぃいっ!?」 思わず声が裏返ってしまったティファを、誰も責められなかった。 責める人間はおらず、謝る愚者だけがティファの前にいたのだから。「いやぁ、あの後ウォレンさんが来てさ? ほら、ポルコが遺した遺産があっただろ? あれの残りがそっくりそのまま俺のになるんだって。三分の二くらいは使われたらしいんだけど、残りの所有権は俺にあるみたいで……」「つ、つまりアズリーさんは……」「まぁ、超が付く程の金持ちって事になるな……ははは」 照れ臭そうに笑うアズリーを、ティファが直視する事は出来なかった。 両手で目を覆い、自身の失敗を嘆く方が先だったからだ。(失敗した! 失敗した! 失敗した! 失敗した! 失敗した! 失敗した! 失敗した! 失敗した! 失敗した! 失敗した! 失敗した! 失敗した! もっと契約書を練り込むべきだったっ!! 契約書が完成したあの時の幸せそうな私を殴ってあげたいっ! 今すぐに優しく強めに殺意を込めて殴ってあげたいっ! 契約書に「分割返済のみ」って記載しておけと力一杯、背骨が折れるまで抱きしめながら諭してあげたいっ!!) 身をよじらせながら過去の自分の行為を省みたティファ。「ま、まぁティファに心配掛けさせちゃったし、魔法や魔術くらいならいつでも――」「――時空転移魔法を教えてください」「…………へ?」 神を超える魔力を保持しないと時空転移魔法が出来ないと、アズリー&ルシファー戦時の会話を忘れていたティファが思い出すのは、アズリーの説明によって思い知るのは、これよりおよそ一分後の話である。