外はもう真っ暗で、かすかな夜風はどこか夏の匂いだ。 梅雨はもうすぐ明ける。そうしたら僕らは本格的な夏を迎えるだろう。 がちゃりと助手席側のドアを開けば、すやすや気持ちよさそうに眠る少女の姿に頬を緩ませる。なんとなく、この子の眠る顔というのは平和的で好きなのだ。 背中側、そして太ももへと手を入れ、ぬくりとした体温を覚えつつ持ち上げる。「よいしょ……うん、相変わらず軽いね」 頭をぶつけないよう注意をし、お姫様だっこをすると少女は身じろぎをし、ぎゅうと首筋に抱きつかれた。ふわんと香る女の子の匂い、それに柔らかな感触を押し当てられて少しだけ気恥ずかしい。 いや、この反応は……。「狸寝入りをするエルフさんは誰かな?」 そう言うと少女はくつくつと笑い、それから眠たげな瞳をすぐ近くで開かせる。とはいえ半ば以上は夢のなかにいるらしく、くあー、と大きなあくびをすると瞳をまた閉じてしまった。ぐりっと頬を擦りつけてきたのは「このままお部屋まで運んでちょうだい」という可愛い命令らしい。 華奢な外見よりも軽く感じる身体を支え、ぬくぬくとした温かさを楽しみつつ車のドアを閉じる。マンションはすぐそこで、このままエレベータに乗って僕らの階へ向かうとしよう。 そこへ乗りこんでくるのは同行していた2人の女性だ。「んんーー、たっぷり遊んだのうーー。まだ頭の中に音楽が響いておる」「分かる分かる。音楽もそうだけどさー、さっきから足元がふわふわしてんだよねー」