「……お疲れ」 俺は、一夜明けた土曜日の午前中からナポリたんに呼び出され、昨夜の佳世との騒動の詳細を説明していた。聞き終えたナポリたんの第一声がやたらとしみる。「……まあ、仕方ないにしろ、やっぱり後味はよくない」「当たり前だろ。ボクとの歴史以上に、祐介は佳世との歴史を持ってたんだからな」「そのあたりはつらいけど、心のどこかであきらめもついてたんだよね。だけど、白木さんまで巻き込んだあいつらを許せなくて」 俺があの時に突然現れた激情の言い訳をしていると、ナポリたんがわかってるといわんばかりに肩をポンポンと叩いて慰めてくれた。 だってそうだろう。 あんなに無垢な笑顔を、彼氏ですらない俺にも見せてくれるいい子なんだぜ。 そんな白木さんの表情を曇らせたいなんて、馬鹿な男はいないだろ? 池谷以外は。「くやしい」「……おう」「佳世と池谷を埋めたい」「気持ちはわかる」「全裸のまま身体を拘束して、四肢を切断してダルマにした後切断面をアイロンで焦がして止血して、『殺せよぉぉぉぉ!』って絶望の中叫ぶ二人を思う存分蹂躙してからぶっかけたい」「いやリョナはNGだからなそれだけはやめろ。どっかのチェインくさりのカンケイそのものじゃないか」「なんでナポリたんがそのネタを知ってるのかツッコんでいい?」「ボクに知らないネタがあると思うなよ」 浮気した彼女への復讐モノとしては、いろいろな意味で恐ろしいくらいスカッとすると評判だけは聞いたことあるけど、残念ながら俺も詳細は知らないのに。恐るべきジェームス主水もんど。「……そういえば、俺を呼び出した理由ってなに? 面白い情報を仕入れてきたって」 そうだ。ナポリたんがわざわざ俺を呼び出すということは、いま直面している問題にかかわる何かしら重要な情報なんだろう。気を引き締めて聞くか。「ああ、そうだった。お隣県に住んでいた池谷が、こっちに引っ越してきた理由がわかったぞ」「へっ?」 それって重要なことなのだろうか。いや確かに、こっちに池谷が引っ越ししてこなければ、佳世が浮気することもなかっただろうけど。 思わず怪訝そうにしてしまう俺。「まあ聞け。表立った理由は、池谷の両親の離婚だ」「ふーん」「でな、離婚理由が。池谷の父親の浮気なんだと」「……はぁ?」「笑えるだろ。で、離婚して池谷は母親の実家があるこっちに引っ越してきたわけだ。池谷の母親はいいとこのお嬢様で、離婚した今のほうが快適な生活らしいぞ」「……はは、なんつーか、血は争えないってことか」「まさしく」 乾いた笑いが出た。多少の草を生やしても緑地化しないくらい乾いた砂漠の笑いだ。オアシスすらない。ホワットエヴァー。