お茶会を無事に終えた後、俺はシロをぎゅっと抱きしめたままほぼ一日を過ごす羽目になった。まあ慣れたもので俺はあまり気にならなかったのだけども、この館で働く従業員さんと目が合った時に驚かせてしまったのは申し訳なく思う。そしてフリードはスルーしてきた。もう既に俺の扱いに慣れているのだろう、さすがは有能な執事である。それにしてもやはりシロは軽い。本当に、食べたものを感じさせないほどに軽いのだ。これもファンタジー! ……で済むのか?とか考えていた晩御飯の事。「そういえばシロ来なかったわね。もしかしてずっと抱きついてたの?」その通りである。晩御飯の時間になって、流石にお行儀が悪いから降りなさいと言ってようやく降りたくらいだ。今日はずっとウェンディもいたのだが、段々と膨れっ面になっていくのがとても面白くて可愛かった。後でぎゅっとしてあげよう。「ん」シロはというと気にもせずにクリス特製の晩御飯を一心不乱に食べ続けている。それにしても良く食べるなあ……。「そんな羨ま、じゃなかった。そんな事してるなら来れば良かったのに」「こっちのが大切」「わからなくもないけど、そんなんじゃいずれ追い抜くわよ」シロはそんなソルテの挑発を気にもせず食事を続けているが、小さくぽつりと「……それはない」と呟いた。聞こえていたのは俺だけだったのかもしれないが、犬の聴力は人の約4倍だったはず。もしかしたらソルテやレンゲにも聞こえていたのかもしれない。その日は特に問題もなく普通に晩御飯を食べ終えると、俺はウェンディとシロとお風呂に入りそのまま部屋に向かった。ちなみに今の部屋割りは俺1人、紅い戦線で3人、シロとウェンディで2人となっている。朝錬などもあることから俺を起こすまいと三人部屋にしたのだ。その時、ウェンディとシロのどちらが俺と同じ部屋になるのか争ったのだが、公平にするために俺が一人部屋になったのだ。それに、三人で寝るとなると一つのベッドになるだろう。この部屋のベッドはキングサイズではないし、わざわざ用意してもらうのも悪いので一人でとなったのだ。少し寂しくはあるが久々にベッドを一人で使えるというのも悪くは無い。大の字になって寝たり、寝相を気にしないでいいのも気が楽でよかった。まあ、朝になったらシロかウェンディが忍び込んでいることもあるのだが……。そんな一人で寝ていた夜、ふと何の知らせかわからないが夜中に目が覚める。ベッドの横に置いてある水差しから水をコップに注ぎ一口のみ、月明かりに気がつくとなんとなくベランダに出てみた。すると、館の庭で黒い影が俊敏に動き回っているのが見える。「あれは……」「お早うございますご主人様。あれはシロですよ」独り言だと思っていたのだが、まさか返答があるとは。声のした方を振り返ると寝巻き姿でベランダに出ているウェンディがいた。「起きてたのか?」「いえ、シロが出て行く気配がしたので今さっき起きたというのが正しいですね」「シロはなにをしているんだ?」「多分ですが……いつもの鍛錬だと思います」「いつもの?」