私には、魔法がある。 震える足で一歩を踏み出すと、コウお母さんが私の肩に手をおいた。 見上げると、辛そうな顔をしているコウお母さん。「コウお母さん、あの、私……」「わかってる。一度馬車に戻りましょう。……セキ、今手元に持ってきた治療道具だけじゃ足りない。馬車に戻ってとってくるわね」 コウお母さんはそう言って、私の手を握る。セキさんはリュウキさんのことで頭がいっぱいのようで、返事はない。 コウお母さんはそのまま返事は待たずに私を引っ張って外に連れ出した。 外に魔物がいないことを確認して、馬車の中に入ると、私とコウお母さん二人きりになった。