それからというもの。 佳世は、俺の周囲に予告もせず出没するようになってきた。 例えば、朝の登校時。「祐介、おはよう。一緒に行こ?」 またある時は、昼休み。「祐介、中庭でお昼食べない?」 そして下校時も。「祐介、今日は一緒にゲーセンに行かない?」 帰宅して別れるときなどは、さらなるおまけつき。「きょうはわたしの家に遊びに来ない? お父さんお母さんも久しぶりに祐介と話したいって」 断るのも面倒くさかった俺は、乗り気でないのにもかかわらず、はっきり拒絶をしなかった。 そのせいか、第三者から見るといかにもラブラブバカップルに見えているかもしれない。 あくまで、俺の表情や態度を除外すれば、だが。 なんで突然こんなに付きまとうようになったのかはわからんが、バスケ部の事件が関連しているのは間違いないだろう。 ま、すぐに思い浮かぶのは。 佳世と池谷が危険物を持ち込んだ犯人で。 それがバレたら二人とも何かしらの処罰を受けるだろうから。 ほとぼりが冷めるまでカムフラージュしておくために必要な対処。 なんてうがった見方だ。 少なくとも、佳世は俺を見ていない。 佳世の両親とも話は盛り上がらなかったし、ちゃんと俺を見ているのなら、すぐに察することができるはずだから。 ──俺が佳世のことを見ていないということが。 そりゃそうだろう。後ろめたさ満点の、あの汚い笑顔がすべてだ。 彼女と一緒にいて、なぜこんな気分にならなきゃならないんだ。 独りになると落ち着くなんて、どんな関係だ。