ぱちんと彼女の瞳は瞬きをして、それから無意識に僕の指を握ってくる。何かを考えているとき、指先で手の甲をいじってくる癖があることは、たぶん僕にしか気づけていないと思う。くすぐったいけれど指摘をするつもりはまったく無い。 眉間に可愛らしい皺を刻んだマリーは、意を決したように見上げてきた。「そうね……続きが気になるという意味なら、あの紫色のロボットね。これまで私はロボット物のアニメ全般がまったく分からなかったけれど、あれは別。生々しさと、ぞっとする演出を高く評価したいと思うわね。おまけに今のテレビ版を見終えても映画版が待っているなんて凄いわ」 う、うん、凛々しい顔ですごく早口になったね。 これがオタクというものなのか、こちらが「よく分からない」という表情をすると「いかに魅力的なのか」を一生懸命になって伝えようとしてくる。「あら、今夜の予定は決まったわね。日本に住んでいるあなたが大作を知らないだなんて、これはもう罪よ。はっきり言って有罪だわ。明日は日曜日だし、夜更かしをしても許される素晴らしさをお互いに楽しみましょう」