アリス様はまるでバッサリ切る様に、神崎さんが集団戦では戦えないとおっしゃられた後、紫之宮財閥が成長する事をおっしゃられた。 確かに神崎さんはコミュ障だと報告を受けておりますが、彼を直接見た限りでは人の心が理解出来ない様なタイプには見えなかったのですが……? ですが、アリス様がそうおっしゃられたという事は、そうなのでしょうね。 それにこれだけを聞かれれば、紫之宮財閥が三大財閥から抜け出る存在になるように聞こえるかもしれないですが、この話の中にアリス様が関与した場合の事が出てきていません。 おそらく黒柳さんが出て来られれば、アリス様も再び表舞台に立たれるでしょう。 ……あ、そういうことですか。 私はここに来て、やっとアリス様の狙いがわかりました。 アリス様は先を見越して、ここでアリアさんに挫折を味わせる事で成長してもらい、紫之宮財閥相手に戦える存在に育てようとされているんじゃないでしょうか。 これはアリス様に命じられて調べた事ですが、紫之宮財閥――というより黒柳さんには、彼を慕う人間の中に、情報収集に長たけ、噂の真偽を見極める能力を持つ少女と、幼い頃から持つ映像記憶能力を失わずに育った、神童とまで呼ばれる少女が居る事がわかっております。 彼女達は必ず紫之宮財閥側に付くでしょう。 そしてそこには、紫之宮愛さんまで加わるのです。 となればいくらアリス様と言えど、一人では太刀打ちが出来ません。 ですから、その為の戦力を育てるつもりなのでしょう。 そしてこのままいけば西条財閥が廃れていくと、アリス様はおっしゃったわけです。 ……そのため、優しいアリス様は今回の様な決断をされたのでしょうね……。 本当はアリス様自身が欲しかったでしょうに……。「しかし――アリスさんの言葉を聞いていると、KAIではその少年に敵わないみたいなのに、KAIとの繋がりを断つわけにはいかないとおっしゃられるのですね? あ、いえ、KAI自身はかなりほしいんですが、なんだかそこが気になりまして」 西条社長が顎に手を当て、アリス様にそうお尋ねになられました。「それは今のKAIの話。だけど、KAIならクロに並べる可能性がある。だからアリスはKAIを育ててあげる」 アリス様はそう言って、ここに来て初めて笑顔を浮かばれました。「まるでKAIを自分の子供の様におっしゃられるのですね。彼は40歳くらいの大人でしょう? そもそも、雲母の代になる頃には彼はもう業界にいないのでは……?」 西条社長の言葉にアリス様は笑顔で首を横に振られました。